米バイオジェン社(旧バイオジェン·アイデック社)のパイプライン進捗


 ・3月20日 バイオジェン·アイデック社がアデュカヌマブのPRIME試験の好結果を公表。

・3月27日 バイオジェン社と米アッヴィ社がダクリズマブの市販承認申請が欧州医薬品庁(EMA)に受理されたことを発表。

 

バイオジェン·アイデック社、スイスNeurimmune社、エーザイ 3月20


 バイオジェン·アイデック社は、アデュカヌマブ(BIIB037)のフェーズⅠbであるPRIME試験において、予め計画されていた中間解析が好結果を示したと発表した。PRIME試験は、無作為化二重盲検で実施。この結果はフランスのニースで開催された第12回アルツハイマー病・パーキンソン病・関連する神経疾患に関する国際会議で同日報告された。

 

 PRIME試験は、アルツハイマー型認知症の症候性前認知症期の患者または軽度アルツハイマー型認知症患者を対象に、安全性、忍容性、薬物動態(PK)および薬力学(PD)を評価することが目的。中間解析は166人の患者のデータを対象に行われた。プラセボ群(n=40)、アデュカヌマブ1mg/kg群(n=31)、3mg/kg群(n=33)、10mg/kg群(n=32)に振り分けて最大54週間の治療を受けていた。さらに6mg/kgを最大30週投与された群(n=30)も分析の対象に含まれていた。

 

 その結果、アデュカヌマブの54週間の投与は、用量依存的で治療期間依存的なアミロイド斑の減少をもたらした。ベースライン、26週時点、54週時点で、放射性トレーサー18F-AV45(Florbetapir)を注射後に脳アミロイド・イメージングを行った。脳内のアミロイドの沈着を定量評価する目的で解剖学的にアミロイドの沈着が少ないとされる小脳を対照として前頭葉、頭頂葉、外側側頭葉、感覚運動野、前帯状皮質、後帯状皮質のSUVR(standardized uptake value ratio)を求めた。プラセボのSUVRは、ベースラインから変化していなかった。一方、プラセボ群に比べて26週の時点でアデュカヌマブ3mg/kg投与群(p<0.01)、6mg/kg群(p<0.001)、10mg/kg群(p<0.001)においては、26週の時点でアミロイド斑の有意な減少が見られた。54週時点で比較しても、3mg/kg群(p<0.001)と10mg/kg群(p<0.001)は、プラセボ群と比して有意差を示した(6mg/kg群の患者は治療期間が54週に至っていなかった)。

 

 興味深いのは、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアと臨床的認知症重症度判定尺度(CDR-SB)スコアを用いた認知機能への影響である。プラセボ投与群のMMSEのスコアは、1年間に平均3.14ポイント低下していたが、アデュカヌマブ投与群のスコアの低下は1mg/kg投与群では2.21ポイント、3mg/kg投与群では0.75ポイント、10mg/kg投与群では0.58ポイント。3mg/kg投与群と10mg/kg投与群においてプラセボ投与群との差は有意だった(いずれもp<0.05)。

 

 CDR-SBのスコアは、プラセボ群では1年間に平均2.04ポイントの低下であったが、アデュカヌマブ投与群では1mg/kg群は1.70ポイント、3mg/kg投与群では1.33ポイント、10mg/kg投与群では0.59ポイントの低下で10mg/kg群とプラセボ群の間で有意になった(p<0.05)。

 

 アデュカヌマブに対する免疫反応は3%の患者に認められたが一過性で、アデュカヌマブの薬物動態に影響は見られなかった。治療関連の有害事象および重篤な有害事象の中で最も多く見られたのはアミロイド関連画像異常(ARIA)だった。試験期間中の死亡は3件で、全て治療関連ではないと見なされた。

 

 バイオジェン社は、安全性のプロファイルは容認できるものとし、アデュカヌマブのフェーズⅢ試験の患者登録を2015年中に開始する計画だ。同社は2007年、Neurimmune社との共同開発・ライセンス契約を通じて開発権を得ている。また、エーザイはアデュカヌマブに関する共同開発および共同販促に係わるオプション権を保有している。オプションの行使の時期は「BIIB037のフェーズⅠb試験およびBAN2401のフェーズⅡ試験双方の完了後」、「BIIB037のフェーズⅢ試験終了後に設定されている。

 

バイオジェン社、アッヴィ社、スイスロシュ社 3月27


 バイオジェン社と米アッヴィ社は「ゼナパックス」(ダクリズマブ、BIIB019)の多発性硬化症治療薬としての市販承認申請が欧州医薬品庁(EMA)に受理されたと発表した。

 

 欧州の申請は、再発寛解型の多発性硬化症の患者を対象にダクリズマブを4週間毎150mgの皮下投与とインターフェロンβ1aと比較するフェーズⅢであるDECIDE試験(n=1841)とプラセボを対照にするSELECT試験(n=626)が含まれている。前者は米州、欧州を中心に225施設、後者は欧州を中心に76施設で実施された。今後、米国での申請に注目が集まる。

 

 ダクリズマブはα鎖、β鎖、γ鎖のヘテロ3量体から成る抗IL-2受容体のうち、α鎖(CD25)を標的とするヒト型のモノクローナル抗体。米国立衛生研究所(NIH)の研究プロジェクトのプロテイン·デザイン·ラボ(PDL)によって開発されて、1997年から腎臓移植時の免疫抑制剤として米国で市販が開始された。販売会社はロシュ社であったが、普及しないために販売は中止された。ロシュ社は自己免疫疾患の権利も取得していたが2006年にその権利を返還した経緯がある。その後、アッヴィ社がその権利を買い取り、バイオジェン社と開発を進めてきた。