今年1本目の展覧会は、東京現代美術館の『石岡瑛子展 血が、汗が、涙がデザインできるか』(2月14日まで)。この展示ポスターを見た人が、興味が湧かなかったからスルーしていたというのですが、そこはぜひとも足を運んでほしいです。なぜなら前半の展示は広告の力が世の中を席巻していた時代に活躍した彼女の作品を見れば、その名を知らずとも「あー、あのポスターにコマーシャルか」と一気に脳内タイムスリップできる方は多いと思うからです。私も『石岡瑛子展』をやるというのはネットで知っていたので楽しみにしていたのですが、このチラシを手に取ったときは大きな文字だったのにすぐには気がつきませんでした。



 告知ポスターは確かに何だか怖い感じですが、彼女が後半生に取り組んでいた仕事のひとつで、1993年のアカデミー賞衣装デザイン賞を獲った『ドラキュラ』の衣装デザイン画です。これで興味を持ってここまで来る人がそういない気がするのが残念です。



 さて、ここも時間指定制ですが、やはりこのご時世なのでさほど混んではいませんでした。若い人たちが意外に多かったのは、今どきの人はポスターよりネットで情報を得るので、内容に惹かれて来たということでしょう。ふた回り(三回り?)して彼らには新鮮に感じたのかもしれません。まだアナログだった時代の広告の制作過程も展示されていて、私としては懐かしくて、思わず感慨にふけってしまいました。


 私が初めて彼女に気づいたのは実はアカデミー賞受賞のニュースでした。パルコの広告を知っていてもアートディレクターやデザイナーのことまで知ろうとしていなかったからで、それから彼女の広範囲にわたる仕事を知りました。広告業界で常に新しいものを生み出し、やがてNYへ渡っていくつもの映画、オペラなどの衣装や舞台、北京オリンピック開会式の衣装などを手がけ、また2002年のシルク・ド・ソレイユ『ヴァレカイ』で、サーカス向きとは思えない奇抜なデザインで注目されたそうです。


 私はあまり一般受けはしそうもない『落下の王国』(2006年)の見たこともない風景と彼女のデザインした衣装を観たくて、映画館まで行きました。彼女の関わった映画すべては観ていませんが、会場で真っ二つになった金閣寺のオブジェと、ダイジェスト映像をみて、日本公開が中止になった『ミシマ ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』をいつか機会があったら観てみたいと思いました。



 最後にひっそりとショーケースに収められた英語の絵本《えこの一代記》は、高校生時代につくったものですが、すでに才能の片鱗を見ることができますし、まるでその後の人生の予言書のようでもあったのには驚かされました。


 SNSで鑑賞した人たちが皆とにかく体力消耗したので、そのつもりで来るようにというのは当たっています。