新型コロナウィルスが世界中に蔓延して、何とも暗い日々の中、にわかに日常品になったマスクですが、ペストが流行した昔の欧州で立ち向かう医師が着用した奇妙なマスクは、カラスのクチバシのような形で異彩を放っていました。それが楽しいものとして使用されているのがスチームパンクの世界です。




 欧米から広まり、日本では1990年代あたりから始まったらしいスチームパンクは、今では広くいろいろなところに浸透しています。


 小説から始まり、ゲームの『ファイナル・ファンタジー』、テレビ番組では『大江戸スチームパンク』や『ムジカ・ピッコリーノ』、映画では『スチームボーイ』(2004)、『ワイルド・ワイルド・ウエスト』(1999)『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』(2011)などにその要素があります。




 基本的には動力に蒸気機関が使われているという設定の擬似ヴィクトリア朝風世界ですが、日本ではそれに和風も加わった独特なものになっています。ちょうど時代背景が明治〜大正時代になるので、今まさに日本を席巻している『鬼滅の刃』の時代ですね。


 世界中で愛好家たちが思い思いの扮装で集まって楽しんでいますが、これほど年齢も性別も超えた集団はあまりないのではないでしょうか。一つとして同じものがない手作りの服や小物で装って集会をするだけでなく、普段ちょっとアクセサリーを身に着けるとか、何なら室内を装飾してその世界に浸るとか、いっそ製作に打ち込むというのもありです。



 2017年に参加した〝スチーム・ガーデン〟は、主に真鍮製のガジェットを中心とした真鍮のアクセサリーや革製品の小物などの販売にパフォーマンスもあって、まるで学校の文化祭のノリでした。先日のハロウィンに重なった〝日本蒸奇博覧會〟は屋外の撮影スタジオエリアで開催され、売る側も客もこの異世界に浸って満喫していました。このイベントは12月に大阪、来年1月に博多でも開催されますし、小物などは限定ショップや通販でも見ることができます。





 常設のレトロ未来の世界を楽しむなら、19世紀末の作家ジュール・ヴェルヌが『八十日間世界一周』などに描いた未来の機械を実際に体験できる遊園地「レ・マシーン・ド・レ」が彼の生地であるフランスのナントにあります。アフターコロナのいつの日にか、ぜひ行ってみたいところです。