●積極性のみえる協会けんぽの取り組み
このシリーズでは医療費適正化への地域の取り組みとして、大阪府の後発医薬品(GE)使用促進の事業をテキストに考えていくことにしている。なお、大阪府のGE使用促進事業ロードマップは本稿③の末に添付しているのでご参照願いたい。
前回は、2018年度からのモデル事業の19年度以降の府内全域への水平展開の事業内容をみてきた。今回は、主に高齢者にGE使用忌避率が高いことに着目した保険者との協働事業について紹介する。
医療費適正化の有力ツールとして、保険者はGEに注目を続けてきたことは周知のことである。政府がGE使用促進を言い出す以前から、主に有力な健康保険組合などがキャンペーン活動を開始し、現在では国保、協会けんぽなども強い関心と、キャンペーン活動への共催なども地域レベルで進んでいる。ただ、こうした保険者のGE使用促進に対する取り組みは一枚岩で行われてきたというより、政府の使用促進政策に突き動かされている経緯と側面も小さくはない。
「経済財政運営と改革の基本方針2017」の閣議を決定を経て、20年9月までにGE使用割合を80%にするとの目標が定められて以降、国からは18年度からの第3期医療費適正化計画にGE使用取り組み目標を策定することや、保険者協議会における地域関係者との連携・協力推進が政府から保険者に求められてきた経緯がある。
国の姿勢をまとめたのが、18年3月に厚生労働省の5課長が連名で出した都道府県への通知「保険者協議会と後発医薬品協議会の連携等による後発医薬品の使用促進について」だ。この通知では、GE使用促進策として、保険者横断的に取り組みを進めていく必要と、その効果への期待が語られている。
つまり、都道府県のGE使用促進協議会への積極的な参画と活用を促しているのだが、とくに地方協議会を「活用する」ことへの要請の強さは、保険者の医療費適正化策全般への関与を高めるひとつの有力ツールだという厚生労働省の認識が示されていると見ることもできる。
この通知は具体的に、①都道府県における薬務部門、民生部門、国保部門との連携②都道府県保険者協議会と後発医薬品協議会との連携――を示し、なかでも②に関しては具体手な取り組み方法まで示している。それを以下に紹介してみよう。
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・GE使用に積極的な療機関、薬局の取り組み事例や使用GE選定の考え方の紹介(医療機関間等での好事例の共有)
・都道府県で作成する地域の中核的な役割を果たす医療機関で採用されているGEをまとめた汎用GEリストの周知
・関係団体、GEメーカー等によるGEの品質や薬事規制に関する勉強会の開催
・GE品質情報検討会等のGEの品質信頼性向上のための取り組みの周知
・GEの品質や安定供給等について理解を深めるためのGEメーカーの製造工場や卸売販売業者の倉庫等の視察
・国から提供するNDBデータや都道府県内の保険者が有するレセプト情報を活用した現状把握や対応方針の検討
・GE使用が進んでいない医療機関・薬局への働きかけ
・保険者における取り組み事例や差額通知対象者選定の考え方の紹介(保険者間での好事例の共有)
・保険者からの差額通知送付時期を医療機関や薬局に伝えることによる患者に対する一体的な働きかけ
・関係者協働での住民や医療関係者への広報活動の企画・実施
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大阪ではこうした通知を受けて、協会けんぽが府の使用促進協議会との連携具体策を示している。19年度には府内の薬局に対し、「ジェネリック医薬品に関するお知らせ~貴薬局の調剤状況について~」を協会けんぽ加入者の処方者数9人以下の薬局(164)を除いた府内全薬局3680薬局を対象に送付する。
薬局へのインフォメーションは大まかに6項目にのぼる。そのなかには、当該薬局のGE使用促進に資する上位10薬品のリストまで情報提供する。むろん、GEがある先発品の処方がみられているケースを対象にしている。そして、その情報に至るまでの当該薬局の処方傾向のデータも示す。
最初のデータは、「協会けんぽ加入者への調剤状況」。当該薬局の18年度のある月の協会けんぽ加入者とその調剤数量を示すもの。例えば人数は、「当該薬局で調剤を受けた協会けんぽ加入者数は256人」とのデータを、その薬局が存在する2次医療圏平均と大阪府平均との比較もみせ、そのなかで、「後発医薬品を調剤した加入者数とその割合」もそれも2次医療圏と府平均の比較でみせる。さらにそれを数量データに置き換え、GEのある先発医薬品の数量割合、GEの調剤数量、GE数量割合を示し、同様に金額ベースでも示す。
実際にはどのようなデータが示されるのか。サンプルを使ってみてみる。
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【人 数】 当該薬局 2次医療圏平均 府平均
協会けんぽの加入者数 256人 181人 178人
うちGE調剤加入者数 194人 133人 133人
GE調剤した加入者割合 75.9% 73.5% 74.6%
【数 量】
当該薬局の調剤数量 18,749 26,509 26,955
GEのある先発品調剤数量 2,990 4,823 4,743
GEの調剤数量 8,585 13,361 13,500
GE数量割合 74.2% 73.5% 74.0%
【金 額】
当該薬局で調剤した薬剤金額 802,450円 1,320,466円 1,437,841円
GEの調剤金額 171,064円 227,896円 242,055円
GEの金額割合 21.3% 17.3% 16.8%
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最初にこのデータが提示され、以下、「後発医薬品数量割合と一般名処方が含まれるレセプト割合による当該薬局の位置づけ」、「後発医薬品数量割合と処方箋の集中状況による当該薬局の位置づけ」、「当該薬局の薬効分類別後発医薬品数量割合」、「当該薬局の年齢別後発医薬品数量割合」などのデータがグラフ化されて示される。
通知された調剤薬局は、自らがGE使用で地域のなかでどのような位置づけがわかる仕組み。そして、前述した「後発医薬品数量割合向上に寄与する上位10薬品」が提示される。GEのある先発品リストとその「切り替え目標値」が示されるわけで、受け取った薬局にはインパクトのある通知になるかもしれない。
次回は協会けんぽ大阪支部が、大阪府の使用促進協議会に補足資料として提出した全国偏差との差から見た、地域の課題分析の例を見ていくことにする。(幸)