2018年度の“ダブル改定”に向けた議論が活発化してきた。改定の目的は、「団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、国民一人ひとりが状態に応じた適切なサービスを受けられるよう、質が高く効率的な医療・介護の提供体制の整備を推進」することである。 


 言い換えれば、地域包括ケアシステム構築に向けた改定ということになる。細かい議論は今後の中医協で行われることになるが、“当確”マークが出ているものが2つある。「遠隔診療」と「重症化予防」の評価だ。MRやMSとしては、4月の改定を待たずに、今のうちから得意先が改定後に勝てるように、仕掛けていきたい。 


「遠隔診療」については、人口減少と人口行動の変化により、外来患者の減少が避けられない診療所では、導入のメリットが大きい。もちろん、全患者を対象とするのではなく、患者サービスの一環として、生活習慣病患者を対象に実施するといいだろう。


 私を含めて、生活習慣病の患者が最も受診したくないのがインフルエンザのシーズンだろう。体調自体は悪くないのに、せき込む患者がたくさんいる空間に長時間いるのはストレスフルだ。もし、私のかかりつけ医が遠隔診療を提案してくれたら、喜んで参加したい。改定前は、わずかな点数しか算定できないが、「予約診療」などを盛り込むなどして、できれば改定前に始めたほうがいい。いずれにしても生活習慣病関連は、遠隔診療が拡大することになるので、関連製品を担当するMRは、得意先の先生と議論してみることをおすすめしたい。


 もうひとつの「重症化予防」は、主に透析予防のことを指しており、経済財政諮問会議に示された資料には、沖縄、徳島、宮崎などが「予防の取り組みが遅れ、人工透析も多い」地域であることなどが示されている。


 重症化予防については、以前に触れたが、保険者努力支援制度と診療報酬の評価を連動させるために、「かかりつけ医と連携した取り組みであること」「保健指導を実施する場合には専門職が取り組みに携わること」などが改定後の評価の施設基準になると予想している。 「遠隔診療」と「重症化予防」以外で気になるのは、“フォーミュラリー”の評価だ。これが改定後に評価されれば、製薬企業にとって、病院薬剤師対策がますます重要になる。 


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川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。