診療報酬改定よりも外来市場を大きく変化させる可能性が高いもの。それは“働き方改革”だ。
医療は“聖域”という雰囲気を吹き飛ばしたのが、聖路加国際病院が2017年5月12日に発表した土曜日の外来診療の縮小だった。労働基準監督署に是正を求められ、ほぼすべての診療科(34科)で行っていたが、同年6月から14科に絞り込んで行うと発表したのだ。
総務省によると、1週間の労働時間が週60時間を超える(つまり月80時間超の時間外労働)雇用者の割合で医師は4割を超え、自動車運転従者と並んで他の職種よりも重労働となっている。仮に、急性期病院がホワイト企業なみに医師の勤務時間を8:00~17:00+土曜日半日の勤務を目指した場合、外来の大部分を縮小しても人手が足りなくなるだろう。
さらに厄介なのは、講演会や勉強会、チーム医療の委員会なども、参加が必須であれば紛れもない「時間外労働」となる。2018年度改定でも評価が拡大しそうなチーム医療や多職種連携拡大の雰囲気に水を差すことにならなければ良いが……。
2018年度診療報酬改定の基本方針(骨子案)にも、働き方改革について▽チーム医療等の推進(業務の共同化、移管等)等の勤務環境の改善▽業務の効率化・合理化▽ICT等の将来の医療を担う新たな技術の着実な導入▽地域包括ケアシステム構築のための多職種連携による取り組みの強化――と並んで「外来医療の機能分化」が盛り込まれている。
具体的には、「大病院受診時定額負担の見直しを含め、大病院と中小病院・診療所の機能分化を推進」とあり、大病院の外来を縮小し、“かかりつけ医”に配分することが示唆されている。
改定後は図のように、一部の病院が経営指標として取り入れている「入院外来比率」を1:1.5(例えば、1日当たりの入院患者が1000人なら外来患者は1500人)を目指していくことになるだろう。
MRやMSとしては、得意先の働き方改革の取り組み具合に加え、外来戦略や入院外来比率を把握し、変化を先読みしなければならない。
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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。