「オレは八百長はやらない」。酒に酔った貴ノ岩がそんな趣旨のセリフを吐くことは、よく知られたことだったらしい。複数の週刊誌にそのことは出ていた。だが今週、自発的引退表明にまで至った横綱・日馬富士事件の“裏側”について、週刊新潮ほど踏み込んだ記事を書いた社はなかった。 


『「貴乃花」停戦条件は「モンゴル互助会」殲滅』。今回の問題で、貴乃花親方がかくも強硬な態度をとっている理由は、密かに星を譲り合うモンゴル勢の中で、貴ノ岩ひとりガチンコに固執したために起きた“制裁”と見たためで、親方はそれを明らかにするために、相撲協会との対決姿勢を保っている。それが新潮記事の主張である。 


《“八百長”“ガチンコ”というキーワードを含めて事件全体を捉えると、クリアになります》《まず、そのようなキーワードが見え隠れするような事件について協会に報告しても揉み消されるのは目に見えている》《警察の聴取に対して、“ガチンコ”“八百長”という言葉に言及すれば、それは裁判記録に残るし、傍聴した記者が記事にするかもしれない》 


 新潮はそんな「関係者」の言葉を引く形で、貴乃花親方の狙いを解説するのである。そればかりか『「優勝40回で我がもの顔 「白鵬」灰色の「十番勝負」を検証した』という記事では、白鵬と日馬富士、白鵬と照ノ富士の取り組みなど、モンゴル力士の“不可解な取り組み”を疑惑として取り上げている。つまり事件の背後には、横綱白鵬を中心とする八百長疑惑がある、と見立てているのである。


  週刊文春も『貴乃花が激怒した白鵬の「暗黒面」』と銘打って、《白鵬の目配せをきっかけに日馬富士の暴行が始まった》とする捜査関係者の談話を載せるなど、事件の背景に、白鵬対貴乃花親方の因縁があった、としているが、新潮ほどダイレクトに八百長疑惑とまで言い切ってはいない。 


 相撲協会は早速、新潮に抗議文を送りつけている。果たしてこの問題、新潮が主張する方向にまで今後、展開してゆくのか。このところ日馬富士問題で、テレビ報道が一色に塗りつぶされる傾向には、ゲンナリする気持ちも抱きつつ、事件の展開にも少なからず関心を引きずられる自分がいる。 


 サンデー毎日は、青木理氏による現役自衛官実名告発スクープの第2弾『防衛省・自衛隊 情報隠蔽の深層』。それによると、国会で2年前、共産党議員が政府に突きつけた防衛省内部文書の問題で、防衛省・政府は国会答弁で文書の存在を否定しておきながら、翌日には、当該文書を「省秘」、つまり秘密指定していたという。情報漏洩を疑われた告発者の取り調べでは、「行政の長も激怒している」というセリフもあったという。 


 この構図はまさに、モリカケ問題とも重なり合う。今国会の質疑は、聞くに堪えない強弁と詭弁ばかりだ。森友学園へのべらぼうな土地価格の値引きを「根拠がない」とする会計検査院の指摘があったにもかかわらず、政府は謝罪せず、再調査もしない。結局のところ、この問題は“ずさんな文書管理”ゆえのことではなく、一糸乱れぬ“証拠隠滅”の結果ではなかったのか。そうとしか理解しようがない態度である。 


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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。最新刊に沖縄県民の潜在意識を探った『国権と島と涙』(朝日新聞出版)がある。