診療報酬の施設基準は、クリアするのが難しいからこそ意味がある。そういう面では、7:1入院基本料に設定されている「在宅復帰率」の存在意義は、ほぼない。2018年度では算定式が再編される可能性もあるが、代わりに注目を集めそうなのが“再入院率”だ。 


 中医協の議論では「再入院率は、在宅復帰率と同様に指標として重要であると考えられるという指摘もある一方、医学的に必要な再入院があることなどから、緻密な条件設定がないと評価が困難との指摘もあった」という検討結果がまとめられている。言い換えれば、計算式から「予定している入院」を排除し「退院後、再び6週間以内に予定しない再入院」の割合を計算すれば評価できるのでは?と思ってしまう。 


 再入院と言えば「心不全」を思い浮かべる読者が多いと思う。公益財団法人日本心臓財団によると、急性増悪による再入院の原因は、塩分・水分制限の不徹底、治療薬服用の不徹底、過労やストレスといった患者さんの要因が6割を占めていることから、多職種連携によるケアが重要なことがわかる。 


 さらに、今後やっかいになるのが認知症患者の増加による再入院率の悪化だ。このグラフは、前回2016年度の診療報酬改定を議論する際に中医協に提出されたものだ。認知症を有する患者は、脳梗塞、肺炎、骨折・外傷、心不全、尿路感染症、片麻痺などさまざまな疾患で一般病棟に入院していることが指摘された。


 



 彼らが退院しても、認知症であることから“患者側の理由”で再入院率が増加してしまうかもしれない。


 この再入院問題を解決するためには、多職種連携に加え、製薬企業側のコミットメントも求められる。とくに、認知症薬や再入院率の高い疾患の関連薬剤を持つMRには期待したい。 


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川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。