森友学園の経営者・籠池夫妻の拘留が、凶悪犯罪の被疑者さながらに4ヵ月を越える事態になっている。そんななか、週刊現代は長男・佳茂氏の『「接見禁止のまま4ヵ月。いくらなんでも酷すぎる」』というインタビュー記事を掲載した。 


「安倍総理が国会答弁で『しつこい方だ』と手のひらを反すやいなや(略)、塚本幼稚園を素晴らしいと言っていた保守の人たちも一気に離れていったのです」。春以来の流れをそう振り返り、学校建設の地鎮祭の際、松井・大阪府知事からも祝電が寄せられた逸話を披露する。松井氏と言えば、籠池氏が証人喚問でも“はしごを外した人物”として繰り返し名指しした人だ。「忘れたとは言わせん。『籠池さんとは会ったこともない』なんてよく言えたもんやな」と、息子も込み上げる怒りをぶちまける。


 証拠隠滅も逃走の恐れもない被疑者を保釈せず、家族との接見も許さない。佳茂氏は「『日本の司法制度は中世並みだ』と言った人がいますが、本当にそうかもしれないと思います」と、司法への疑念も口にする。取材記者の文章も《(このような司法判断の)背後にはなんらかの忖度がある、というのはうがち過ぎだろうか》と締め括られている。 “うがち過ぎ”どころか、この国の司法はもはや行政の下部機関だ。沖縄問題を注視していれば、それを痛感する。国と県との訴訟では、裁判開始の直前に、高裁支部長が突如差し替えられ、新支部長は県側の証人申請をことごとく却下した。辺野古・高江の抗議運動リーダー・山城博司氏は、鉄条網をペンチで切った、防衛局職員の腕をつかんだ、などの微罪で逮捕され、籠池夫妻と同様に接見禁止のまま5ヵ月もの長期勾留を強いられた。この国の司法はもう、政府の恣意的な政治判断をサポートする機関に成り下がっている。 


 サンデー毎日はこのモリカケ問題で『元会計検査院局長が実名激白 「致命的な疑惑はコレだ!」』という記事を掲載した。会計検査院で局長まで務めたキャリアを持つ有川博・日大教授のインタビューである。 


 有川氏は先の森友問題の検査院報告について「かなり踏み込んだ印象だ。金額が出ていないのが国民にとって不満だろうが、それ以外についておかしい点が全部書き込まれている」としながらも、結びの表現が柔らかかったために、事案の検証をせず将来に向けた改善をすれば充分、という政府答弁に利用されてしまったという。 


 有川氏はこの検査院報告を読み、「森友の事件で行政が国家に損失を与えたことは間違いない」とまで断言しているが、国会での審議は今回も、政府の強弁とごまかしで押し切られてしまった。一部報道番組のキャスターは政府に同調し、「新事実は出なかった」と野党を批判する。日本の“後進国化”はもう、そこまで進んでいる。


  相撲界を揺るがす貴ノ岩暴行事件では、週刊文春が『「モンゴルの闇」に迫る! 貴乃花vs.白鵬 「八百長」の真実』と題したトップ記事を載せた。先週、ライバル誌の週刊新潮が踏み込んだ論点に、文春もまた追随した格好だ。事件は日馬富士の引退で取りあえずの幕引きとなるのか。それとも両誌が追及する八百長疑惑にまで広がってゆくのか。国政上の重要問題から世間の目を逸らす“目くらまし”になってしまうのが、何とももどかしいが、これはこれで興味深い話である。 


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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。最新刊に沖縄県民の潜在意識を探った『国権と島と涙』(朝日新聞出版)がある。