12月18日に開催する木村情報技術主催のメディカルセミナーへの申し込みが殺到しており、会場参加は200人超、WEBからの視聴は500人超になる見通しだ。
同イベントの現場のMRへのシェアを製薬企業本社や支店長・所長などにお願いしたところ、反応は真っ二つに分かれた。
ひとつは、無料セミナーであることを歓迎してMRへのシェアを積極的に行ってくれた人たち。一方で、「業務時間内」であることを理由にMRへのシェアに躊躇する人たちも少なくなかった。
全国のMRに伝えたいことは、Judgement Year (審判の年)となる2018年度以降に起きるのは、ダブル改定だけではないということだ。あらゆるプレイヤーが人口減少+地域包括ケアの時代へのソリューションを提示してくるため、製薬企業の論理は今後ますます通用しなくなる。
経済産業省は、“成果報酬型補助金”のソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)を全国的に導入・拡大したい考えのようだ。SIBとは、行政、民間事業者及び資金提供者等が連携して、社会問題の解決をめざす成果志向の取り組みであり、神戸市におけるSIBを活用した糖尿病性腎症等重症化予防事業が注目を集めている(図)。
100人のハイリスク者(未受診および治療中断中)を対象に介入を行い、生活習慣改善率と腎機能低下抑制率を成果指標として、神戸市が委託料を運営組織に支払う仕組みだ。
このSIBについて、経済産業省ヘルスケア産業課課長補佐の岡崎慎一郎氏は、12月6日に開催された高齢者住宅フェスタ2017で講演し、SIB導入のノウハウ集を作成し、ほかの自治体による導入を促進することを明らかにした。さらに、より大規模(広域)でのSIB導入モデルの案件形成を支援すると述べた。
また、今後は、がん検診や糖尿病重症化予防に加え、認知症やフレイル対策にも対象を広げたい考えを岡崎氏は明らかにした。
SIB以外にも経済産業省は、▼健康経営優良法人認定制度▼糖尿病重症化予防プロジェクト▼“仕事付き”高齢者住宅(仮称)の創設▼健康寿命延伸産業創出推進事業――など、無駄な医療費を垂れ流ししない施策を次々と打ち出している。
こうした事業への民間企業の参画について岡崎氏は、「実施したらいいことがわかっていても、国のサポートがなければ続けられない事業では採用できない」と語り、しっかりとマネタイズも考えたうえで応募・参画することを求めた。
エーザイや大塚製薬、ファイザーなどが自治体と包括連携協定を結び、地域との関係を強化しているが、ほかの企業・MRも「地域をよくする」ことを優先順位の上位に引き上げなければならないのが、2018年度以降の世界だ。
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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。