先頃、朝日新聞が原発の使用済み燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場選定の説明会に「1万円」の報酬付きで学生を駆り集めていたことをスクープした。 


 時折、報道されるが、原発の使用済み燃料から出る核のゴミの最終処分場は決まっていない。これは日本だけでなく、世界的にも同様で、数ヵ国で地下数百メートルに保管することが進められているが、地震も火山も多い日本では地下に埋設するのは危ないのではないか、という説もある。それどころか、「最終処分場も決まっていないのに原発を動かしていいのか」という声もある。 


 こうした問題を解決しようと、資源エネルギー庁や原子力発電環境整備機構(NUMO)が最終処分場を選定するために全国各地で説明会を行っている。といっても、官庁のエネ庁やNUMOは民間の広報受託会社にお膳立て業務を委託するのが常。今回受託したのは学生ベンチャーだが、その説明会に1万円の謝礼で学生を集めていたという内容だ。完全なサクラである。 


 そういえば、数年前にも電力会社の原発の地元説明会に元請けの建設会社、下請け会社の社員を動員させ、電力会社が用意した質問をさせた、ということがスクープされた。サクラを使って説明会を行うとは、形式主義であり、悪質な誘導であり、実にケシカラン。 


 だが、ちょっと待て。原発関係では、この手のサクラを使った説明会が圧倒的に多いのだ。なぜなのか。実態を言うと、原発では経済産業省からも原子力安全保安庁、原子力委員会(今はともに原子力規制委員会)からも地元説明会を義務付けられる。もちろん、地元の市町村からもキチンと説明会を開くように言われる。電力会社も公益企業として至極、当然のことと受け止める。地元の市役所や出張所に説明会のポスターを張り、自治会、町内会を通して説明会への出席を要望し、なかには新聞に折り込み広告で参加者を募る。説明会には町の企画課長か係長も出席してくれる。 「ところが、会場に来てくれるのは、原発反対運動を行っている人たちばかりなんです。当局の要望通り、原発の仕組みから説明しようとすると、すかさず、『そんなことはどうでもいい。原発建設反対だ』という声ばかりが上がって、話が進まない。説明会にならない。監督官庁、地元自治体の意向のとおりの説明会にするためには元請け業者を通して下請け、孫請け業者の社員やその家族に出席してもらうしかない。必要と思われる質問も用意して質問してもらわないと説明会にならないんです」(電力会社幹部) 


 核のゴミ最終処分場の選定説明会でも同様なのだ。広報を請け負った会社が説明会参加者を集めるために現金や商品を報酬にして学生を借り集めたサクラなのである。ケシカランこととは言いながら、国民自身のレベルの問題というしかない。(常)