エイザス社は12月8日、同社が提供する数理モデルAI「Forecast-A1」を用いて複数製品のディテールのROIを検証した結果、約半数の施設ではディテールの効果が確認できず、効果があったと考えられる施設群でも、リターンは2000~4000円と小さく、1ディテール1万円という投資に見合っていないことが明らかになったと指摘した。 


 地域包括ケア時代に求められるチーム医療、多職種連携、医療連携、在宅医療への進出などの増加は、MRにとっては医師への面談機会を減少させるものである。とくに、開業医の在宅医療拡大は、“ゴールデンタイム”の消滅を意味するため、情報提供手段を一から見直す必要が出てくるだろう。個人的には、「呼ばれていないのに訪問する」というスタイルには限界を感じている。この古い体質のスタイルを続けている限りは、エイザス社が指摘するようにROI的にMRは非効率のままだろう。 


 では、完全アポイント制にすればいいのか?というと、患者が待ってくれない医師を相手にすると、そう簡単ではない。アポイントといっても我々ビジネスパーソンが30~1時間と考えるアポイントに基づく面談時間が、医師は10分未満(前職時代に調査した結果)と認識するため、満足な情報提供をすることが困難である。 


 そこで、これからの「本社」に求められるのが“デマンドセンター”としての機能である。デマンドセンターとはその名のとおり、需要を喚起するために存在し、医師や薬剤師等との面談機会を醸成する役割を持つ。


 


 デマンドセンターの“武器”として最も有効だと考えられるのがリアル講演会とWEB講演会だろう。講演会の内容が従来のMRのシェア・オブ・ボイス(SOV)型のような内容ではなく、地域包括ケアの実現に向けた課題解決に基づいた内容であるならば、シェア・オブ・マインド(SOM)は高まり、MRは自社製品がその課題にどのように貢献できるかをディテーリングしやすくなる。


 田辺三菱の営業推進部は、約10年前の第11回日本医薬品情報学会・学術総会の一般演題で、「DPC関連情報の提供がMR活動に及ぼす影響」を発表した。 


 同社は2006年10月1日から2007年9月30日の1年間に同社社員がDPC勉強会を実施した483病院の担当MRに任意でアンケート(MRのモチベーションへの影響、面談機会の増減など)を実施した結果、89.3%が「情報提供に対する病院の評価は上がった」、99.2%が「MRのモチベーションが向上」、8割以上が「面会機会が増えた」、「質問の機会が増えた」と回答したということだった。 


 まさに、同社の“DPC専門部隊”は、デマンドセンターとしての役割を果たしていたと言えるだろう。 


 このような面談機会を継続して醸成できるように、本社には、企画を生み出し続けていくことが求められる。


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川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。