12月18日に開催したセミナー「診療報酬改定と製薬企業のプロモーションを考える」には、東京会場とWEB視聴を合わせて約750名に参加していただいた。WEB視聴ではプロジェクターにつないで“集合視聴”してくれた人も多かったため、トータルで1000人以上の人にコンテンツを届けることができたようだ。 


 セミナーの中でお伝えしたメッセージを簡単にご紹介したいと思う。 


 1つめは、WEB講演会に対する医師のインパクト率(「採用する」「増やす」を示したディテール割合)は、リアル講演会やリアルMRよりも劣っているが、話の構成によってそのインパクト率を大幅に上昇することが可能であることを示した。 


 当社が配信した同じ製品のWEB講演会を例にすると、「新たな●●治療薬「XXX」がもたらす効果」というタイトルよりも「●●学の見地からみた生活習慣病治療」というような、医師のニーズに合わせた製品色を排除したタイトルのほうが、インパクト率が高かった。 


 この結果は、MRの日頃のディテーリングにも同じことが言えるだろう。  2つめのメッセージは、地域医療構想・地域包括ケアを実現するために、各地域が抱える課題を、製薬企業としてどのようにコミットするのか?ということだ。 


 そのひとつの手法として「インパクトマップ」を紹介した。 「インパクトマップ」とはアクティビティ(取組・活動)によってもたらされる、アウトプット(活動の成果)、アウトカム(期待される短期~長期の成果)及び社会的インパクトに至る因果関係を示したものである。 


 


 この図のように、「もし~ならば、こうなるだろう」という仮説のもと、この投入(インプット)を実施すれば、あるアウトプットが得られるため、事業がめざす成果(インパクト)を達成できるだろうと考える「ロジックモデル」と、反対に、インパクトから考えて、どのような条件が揃えばそれを達成できるような“正のサイクル”を回せるかと考える「セオリー・オブ・チェンジ」という2つの手法がある。 


 地域の先生方が抱える課題をヒアリングしたうえで、インパクトマップを描いて自社がコミットすべきポイントを探ることが、勝敗を分けることになるだろう。


 3つめは、地域包括ケアの時代は「患者が本当に望んでいることは何か?」にフォーカスされるようになるため、ますますOne Patient Detailing(OPD)が重要になるということだ。院長、主治医、病棟看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師など、チーム医療のメンバーからどのような情報を入手すれば、OPDを実践しやすくなるのか、医師との面談機会が失われるなかで重要なポイントになるだろう。


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川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。