私の場合、風邪は喉のヒリヒリ感から始まる。「あ、まずい」と思ったときには既に遅い。いつも以上にがんばってうがいをする、料理に葱や生姜を多用する、コーヒーは飲みたくなるので紅茶やハーブティーを飲む、など小さな抵抗を試みるものの大抵は引き返せず、完治まで1週間から10日くらいのコースに突入。咳も強く出やすいので、咳止めを飲んでいても、電車内では喉がくすぐったくならないかヒヤヒヤする。
◆厚労省が「進撃の巨人」を啓発に起用
普通感冒でさえ、うつすのもうつされるのも困るこの季節。厚労省は12月22日、インフルエンザ対策の一環として「進撃の巨人」のキャラクターを起用した「3つの咳エチケット」啓発ポスターを公開した。「ゴホッ、ゴホッ」と大口を開けて咳き込む巨人を前に、ファンの中で人気が高いというキャラ曰く「咳・くしゃみをするとき、好きなものを選べ」。選択肢はいずれも「口・鼻を覆う」のだが、その手段が「マスクを付ける」、「袖で」、「ティッシュ・ハンカチで」の3択になっている。
咳の飛沫は約2m先まで飛ぶとされるが、通勤ラッシュの電車内ではその範囲に20~30人はいるかもしれない。インフルエンザウイルスの大きさは0.1ミクロン(1万分の1ミリ)程度であるのに対し、一般的な不織布のマスクで捕捉できる粒子は5ミクロン以上だが、飛沫への対応は可能だ。医療用のN95でも捕捉できる粒子は0.3ミクロン以上とはいえ、飛沫核に対応できる。したがって、マスクの着用である程度ウイルスの拡散を減らすことはできる。
また、今回のポスターでセンターを飾っている「袖」は、「ティッシュ・ハンカチ」と同様、手指からドアノブ、つり革、スイッチなど不特定多数の人が触りがちな物を介した接触感染予防の意味がある。
インフルエンザではないが、イスラム教の巡礼で多くの人が集まる時期の中東呼吸器症候群(MERS)対策として、WHOは次のようなポイントを挙げている。
……熱や咳を伴う呼吸器症状がある場合は、他者との接触を最小限にとどめる。咳をしたり鼻をかんだりするときは、口と鼻をティッシュで覆い、そのティッシュを捨てた後、手をよく洗う。ティッシュを使えない場合は袖の上の方で受け、決して手を使ってはいけない……。
「袖」はこうした記述も参考に強調されたようだ。
◆世界規模での感染サーベイランスも
「今年はインフルエンザの流行が早め」といったニュースを目にする。その根拠は、厚生労働省・感染症サーベイランス事業による「警報・注意報発生システム」のデータだ。全国約5,000の医療機関(定点)において1週間に受診した1医療機関当たりの患者数で流行状況を判断する。10人を超えると「注意報」レベルで、流行発生前なら今後4週間以内に大きな流行が発生する可能性があることを、発生後なら流行継続の可能性を示す。さらに30人を超えると「警報」レベルで、大きな流行の発生・継続が疑われることを示す。
2017年第50週(12月11日~17日)の定点当たり報告数は7.40(患者報告数36,664)となり、前週の定点当たり報告数4.06よりも増加した。全47都道府県で前週の報告数よりも増加し、長崎県(18.94)、岡山県(13.63)、宮崎県(13.61)など11県が「注意報」レベルに達している。定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数を推計すると約35万人となり、前週の推計値(約20万人)よりも増加した。
2009年の「新型インフルエンザ」流行以来、世界レベルでのサーベイランスも強化され、WHOのGlobal Influenza Surveillance and Response System(GISRS)が国連加盟国の約半数をカバーし、隔週で流行状況をアップデートしている。最新の報告では、北半球内でも、中国、ロシア、西欧、東欧、北欧、北米では、検出株の型の内訳が異なっている。 感染症の流行だけでなく「咳エチケット」もグローバル化している。普段から巨人並みの無神経な咳は慎んでもらいたいものだ。 (玲)
Ⓒ諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会