煽り運転の危険性が問題になっている。言うまでもなく、昨年6月、東名高速パーキングエリアで停車を注意されたことを根に持ち、注意した車を追いかけて前に出て幅寄せ運転を執拗に繰り返した揚句、追い越し車線に停車させたことで、注意した車が後続のトラックに追突され、夫婦が死亡した事故が契機だ。
危険運転を繰り返した男が危険運転致死傷罪で逮捕されたが、事件後、煽り運転をされ、怖い思いをした人の経験がいくつも報道され、その中のいくつかが逮捕されている。確かに、高速道路で煽り運転をされると、ぶつけられるのではないかと実に怖い思いをする。
ところが、ドイツのアウトバーンでも追い越し車線でしばしば煽り運転を目にする。前の車との距離が1メートル程度で煽るのである。走行車線を走るドイツ人に「あの煽り運転は危ないではないか」と言うと、ドイツ人は「前を走る車が悪い」と、こともなげに言うのだ。理由はこんな内容だった。
高速道路は早く目的地に着きたい車のためにあり、ゆっくりドライブを楽しみたいのならアウトバーンを走るべきではない。とくに追い越し車線は遅い車を追い越すためのレーンで、追い越したら走行車線に入るのがマナー。追い越し車線で後続車にぶつけられたら、ぶつけられたほうに100%の責任がある。ただ、ぶつけて救急車を呼んだり、警察に通報して時間を無駄にするのが嫌だから、煽り運転をして注意を促しているにすぎない、と言うのである。正にドイツ的というか、合理的発想なのだ。
そう言えば、邦銀の駐在員氏が「アウトバーンに入るときには時速100キロくらいに加速して入らないと、ぶつけられるから怖い」と言っていたのを思い出した。もっとも、向こうのアウトバーンは、例えば3車線と2車線が合流すると、5車線で走り、次の分岐点で2車線と3車線に分かれるようにできていて、日本の高速道路との違いが大きい。
走行車線や一般道での煽り運転は論外だが、単に煽り運転を批判するだけではなく、追い越し車線では煽り運転をされないように注意することも必要だ。要は、日本では運転マナーが悪いということに尽きる。(常)