1月10日に開催された中医協総会で「平成30年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案)」が出され、当日議論した内容が12日の総会で同整理案に追記されて提出された。 


 RISFAXでも報じられたが、初診料、再診料及び調剤基本料等の「未妥結減算」を実績報告する際に、「単品単価契約率」及び「一律値引き契約」の状況に関しても報告を求めることになった。これにより、医療機関・薬局側に採用品目の絞りこみや、一部の大病院等にとどまっている“フォーミュラリー”(医療機関等における標準的な薬剤選択の使用方針に基づく採用医薬品リストとその関連情報)の導入が拡大するかもしれない。 


 もうひとつの注目ポイントは、減薬を促す改定項目が「薬剤総合評価調整加算」の評価対象に「地域包括ケア病棟入院料」が追加されることと、かかりつけ医が入院医療機関や介護保険施設等と連携して行う医薬品の適正使用に係る取り組みを評価することだ。


 急性期病棟よりも高齢の患者が多い地域包括ケア病棟や介護保険施設のほうが減薬の効果が期待できる。しかし、現行は地域包括ケア病棟には減薬のインセンティブがないため、経営的なメリットが少なかった。また、全国老人保健施設協会の調査によると、老健施設の管理医師とかかりつけ医との連携については、薬剤の中止・変更等に係る連携が不十分なため、3割以上の医師が「減量した薬が元に戻って再入所した経験を持つ」という結果につながっていたようだ。このような課題を2018年度の改定で改善することになる。


 医薬品関連以外で最大の改定ポイントは、地域医療構想を促進するための一般病棟の再編だ。一般病棟と療養病棟等の入院基本料について、看護職員配置等に応じた評価(基本部分)と、診療実績に応じた段階的な評価(実績部分)との、組み合わせによる“アウトカム重視”の評価体系に再編・統合することとなった。これにより、従来の7対1から“撤退”する病院も出てくるだろう。 


 さらに“なんちゃって急性期病院”を追い詰めるのが「在宅復帰率」の再編だ。今回の整理案には詳細は書かれていないが、これまでの議論を踏まえると、自院の他病棟への転棟患者が評価対象(計算式の分子)に含まれなくなるかもしれない。


  また、有床診療所の評価が地域包括ケアのなかで高まるため、中小病院から有床診療所に転換する病院が続出するだろう。  入院医療の再編は、間接的に医薬品の使用にも大きな影響を及ぼすことになる。改定前から得意先の先生と情報交換しておきたい。 


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川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。