1月20日に都内で開催された「第7回厚生労働省ICFシンポジウム」に参加した。
ICF(国際生活機能分類)は、WHOが総合的に管理運営しているWHO-FIC(世界保健機関国際統計分類)の中心分類のひとつであり、“生きることの全体像”を示す共通言語と位置づけられている。
ひとりで入浴できない要介護者の清潔を保持するために、通所介護を利用して入浴させてあげるのが従来型のケアマネジメントであるが、その要介護者が「ひとりでお風呂に入りたい」と願うなら、ひとりで入浴するように、“できないことをできるようにする”のがICF的なケアマネジメントだ。
しかし、1424にも及ぶ分類項目の煩雑さと状態を落とし込む評価点にあいまいさがあるため臨床的な信頼性が低く、ICDやFIM(機能的自立度評価表)のような分類ほど浸透していないのが現状だ。
ちなみに、ICFは▼健康状態▼心身機能▼身体構造▼活動と参加▼環境因子▼個人因子――から構成されている。
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心身機能:身体系の生理的機能(心理的機能を含む)
身体構造:器官、肢体とその構成部分などの、身体の解剖学的部分
活動:課題や行為の個人による遂行
参加:生活・人生場面への関わり
環境因子:人々が生活し,人生を送っている物的・社会的・態度的環境
個人因子:個人の人生や生活の特別な背景
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このうち、「活動」と「参加」は他のアセスメントにない視点であり、患者本人が本当に望むことの理解が重要になる地域包括ケアの時代に、ICFはもっと活用されるべきだと思う。
前回2016年度の診療報酬改定では、ADL維持向上等体制加算の新たな算定要件に「必要に応じて他の職種と共同し、患者が再び実現したいと願っている活動や社会参加等について、その優先順位とともに把握し、多職種のカンファレンスで共有していること」というICF的な要件が加わった。
厚生労働省は「当人やその家族、保健・医療・福祉等の幅広い分野の従事者が、ICFを用いることにより、生活機能や疾病の状態についての共通理解を持つことができる」とICFを評価しており、2018年度改定においてもICFに関連した評価を盛り込んでくるかもしれない。
ひとりが抱えている問題・障害による生きづらさを、社会全体でよりよくする可能性を秘めているのがICFである。
あなたが医師や薬剤師に紹介しようとしている薬剤は、患者の「活動」と「参加」、または「感情」にどのような影響を与えるだろうか。これまでのMR活動に、ICF的な視点をプラスしてみよう。
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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。