1月24日の中医協総会に提出された2018年度診療報酬改定の「個別改定項目」から13個のメッセージを読み取ったので、ここで“初公開”したいと思う。
①地域に貢献しない組織は認めない(一人勝ちは許さない)
②地域医療構想を促進するために入院医療を再編する
③「大病院」は段階的に「200床以上」まで引き下げていく
④“かかりつけ”の「定義」を地域に合わせて自ら考えよう
⑤医療機関・薬局の商品は「よいアウトカム」である
⑥入院患者の栄養管理、外来・在宅患者のフレイル対策に力を入れよう
⑦働き方改革を推進するため「配置基準」を緩和する
⑧糖尿病と高血圧患者の「重症化予防」にコミットしよう
⑨ゴールを思い描くことから始めよう
⑩ICTを用いた「遠隔診療」「カンファレンス」を小さなステップからでも始めよう
⑪ポリファーマシー対策は多職種連携で取り組もう
⑫歯科や自治体との連携も進めましょう
⑬患者の「生活」「意思決定」を支援しよう
最初の「地域に貢献しない組織は認めない」は、“いいとこ取り”を許さず、地域包括ケアに貢献しない組織を減収させる改定であるということだ。その代表的な項目が基準調剤加算の廃止に伴って新設される調剤報酬の「地域支援体制加算」だ。算定するには、「地域医療に貢献する体制を有することを示す相当の実績」が求められる。この実績については▼夜間・休日等の対応実績▼かかりつけ薬剤師指導料等の実績――などの件数になるという。
地域の訪問看護に関わる人材育成等の一定の役割を担う訪問看護ステーションを対象に新設された「機能強化型訪問看護管理療養費3」、さらに認知症対策で新設される「認知症サポート指導料」も①に該当するが、これらよりも大きいのが地域包括ケア病棟入院料1の施設基準に「自宅等から入棟した患者の占める割合」などを求めた“地域包括ケアに関する実績”が盛り込まれたことだろう。
④の“かかりつけ”の再定義も外来医療に変化をもたらすだろう。届出数が伸び悩んでいる地域包括診療料等を届け出ていれば、初診料に新設される「機能強化加算」を算定することができるようになる。⑧の重症化予防にもかかりつけ医の役割が期待される。
今回の変化を追い風にできる得意先は、今後も勝ち組になれるかもしれない。ぜひシェアを高めておきたい。
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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。