遠隔診療の診療報酬による評価が期待されていたが「オンライン診療料」(70点/月)と「オンライン医学管理料」(100点/月)という低い評価で、かつ算定要件と対象患者が▼糖尿病透析予防指導管理料▼(認知症)地域包括診療料▼生活習慣病管理料――などを算定している患者で、かつ、初診から6ヵ月以上経過していないと算定できないというシバリをつけられた。これでは、遠隔診療を推進するどころか、遠隔診療つぶしと見られても仕方がない内容だ。 


 しかし、「2018年度診療報酬改定のメッセージ」の10番目に「ICTを用いた『遠隔診療』『カンファレンス』を小さなステップからでも始めよう」と示したように、近い将来、当たり前になる遠隔診療に早くから馴染んでおいたほうがいいし、特にインフルエンザの流行期などは、私のような“元気な”生活習慣病患者は、オンラインで受診して薬をもらうことを選ぶはずだ。 


 あとは、「オンライン診療料」に“予約診療”の保険外併用療養費(自費)をプラスして患者に請求しても問題がないのか、その判断を厚生労働省にゆだねたいところだ。


 現在、3月末発売予定の書籍『ダブル改定とは、〇〇である』を編集しているが、その目次の17番目に「チーム医療とICTへの期待である」という項目を盛り込んだ。 


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「オンライン診療料」の他にもICTへの期待を示した項目がある。 


 そのひとつが「ICTを活用した関係機関連携の推進」だ。図に挙げた各種チーム医療を評価した項目について、リアルの対面に加え、ICTを用いたカンファレンス等を組み合わせて開催することを可能にした。 


 もうひとつの期待は、CPAP(持続陽圧呼吸療法)とHOT(在宅酸素療法)に「遠隔モニタリング加算」(150点/月)が新設されたことだ。CPAPとHOTの遠隔モニタリングは、すでに多くの患者に導入されていることから、すぐに算定できる医療機関が多いだろう。ここで一定の評価・エビデンスが得られ、その一方で、各種疾患におけるモニタリングデバイスにイノベーションが起きれば、生活習慣病を含めた幅広い疾患で「遠隔モニタリング加算」が認められるようになるかもしれない。 


 そうなれば、薬剤師による“オンライン服薬指導”も評価しなければならないし、ICTを用いた医師への減薬・処方提案などにも点数がつくだろう。今回の改定は、このような医療のICT化への第一歩である。ちょっとずつでも始めたほうがよさそうだと先生方に話してみよう。 


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川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。