今週の文春はトップ記事に『本誌アンケートでは83%が証人喚問せよ 佐川国税庁長官を緊急査察する!』という正統派の社会派記事をもってきた。真っ当な切り口だし、そこそこ読ませる調査報道だが、穿った見方をすると、「ウチはこんな記事も載せますよ」という言い訳めいた雰囲気というか、どこかあまり乗り気ではなさそうな“生気のなさ”を感じる。ゲス不倫のスクープを放っていたときのような“生き生きとした感じ”が誌面に欠けるように思えるのだ。 


 具体的に記事のどの部分にそれを感じるか、と問われると、確たる根拠はない。ただ、ここ数週間の経緯、小室哲哉報道による逆風、そして大相撲報道をめぐる連載執筆者の事実上降板、といった出来事から、新機軸に悩んでいるであろう“編集部の事情”をどうしても勘ぐってしまう。不倫ネタと相撲ネタは当分、書きにくいだろうな、とか、“文春砲は下世話なプライバシー攻撃ばかり”と非難されないよう、硬派な記事を載せるバランスを考えているはずだ、とか、そんな作り手の心理状態を思い浮かべつつ記事を見ると、「ほら、やっぱり来た」と手前勝手なストーリーにはめ込んで、色眼鏡で見てしまうのだ。 


 こういう“真っ当な社会派記事”は雑誌の売上げにつながるか、と言えば、このご時世、やはり厳しいに違いない。なんだかんだ言って、ゲス不倫みたいなほうが読者は買ってくれる。記者たちだって、それがわかっているだけに、こうした正統派の報道をバーンとやりながらも、心晴れない部分があるんじゃないのかな、と思うわけである。


  文春編集長自身が以前、新聞のインタビューで「沖縄問題みたいなものは一部の人にしか読まれない(だからやらない)」というようなニュアンスを語っていた。売れてなんぼ、というシビアな世界に身を置けば、下世話だの何だの言われても、「うるせぇ」と払いのけたいのが、ホントのところだろう。 


 朝日新聞をはじめリベラルなメディアが凋落し、切れ味鋭い報道、という点で、一種業界の権威にまでなった文春の体面とホンネ。当事者にはこの部分が、今や相当な葛藤となってのしかかっているのではないか。 


 かと言って、雑誌全体が急速に売上げを減らしているなかで、唯一気を吐いていた文春が迷走状態にはまり込むと、ホントにもう、業界そのものが崩壊しかねない。文春の強みはやはり、人員を投入し労力やコストを惜しまず徹底的に調べ上げるところだ。硬派なら硬派で、以前のユニクロ潜入のようなインパクトある一発を狙わないと、その持ち味がなかなか出て来ない。何とかここは踏ん張って耳目を集めるスクープを期待したい。 


 週刊現代は『細木数子「六星占術」のKKベストセラーズ社長が逃げ出した』という記事で、『歴史人』『一個人』などの雑誌も出している出版社の経営危機を伝えている。社長が朝礼でいきなり、前日付で社長職を退いたことを社員に事後報告、後任社長は廃業支援を行うコンサルティング会社代表であることを明かしたという。 


 そして、この新社長は、組合との団体交渉の席上、「出版事業には興味はない」「コンテンツを切り売りする」と言い放ったらしい。社員たちはパニック状態だろう。もはや大手出版社の社員でも、他人事とは言い切れない同業者の残酷物語だが、何ともうすら寒い時代が到来したものである。 


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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。最新刊に沖縄県民の潜在意識を探った『国権と島と涙』(朝日新聞出版)がある。