前回(2016年度)の診療報酬改定で減薬の取り組みを評価した「薬剤総合評価調整管理料」(外来)と「薬剤総合評価調整加算」(入院患者の退院時)が新設された。 いずれも6種類以上の内服薬を2種類以上減薬したときに算定できる項目だったが、“処方側”だけが評価され、薬局や介護施設では減薬に協力しても1点ももらえなかった。インセンティブがつかなければ組織(薬局)として力を入れられないと薬局薬剤師から言われたこともある。
第3期医療費適正化計画(2018~2023年度)では、新たに「糖尿病の重症化予防の取り組み」、「後発医薬品の使用促進」、「医薬品の適正使用(重複投薬、多剤投与の適正化)」が盛り込まれ、かかりつけ医・薬剤師・薬局の役割の発揮や、病診連携の推進による重複投薬、多剤投与の適正化が求められることとなった。
この動きを促進するためだろう。2018年度の改定では、薬局・施設側にもインセンティブ(一部義務)をつけることになった。 前出の「薬剤総合評価調整管理料」を算定する医療機関と連携し、処方医に対して薬局薬剤師が減薬を提案して、内服薬が2種類以上減少した場合の評価として「服用薬剤調整支援料」(125点)が新設された。「薬剤総合評価調整管理料」(250点)の半額だが、これで組織的に取り組んでくれる薬局が増えるかもしれない。
一方、介護報酬では、多剤投薬されている入所者の処方方針を介護老人保健施設の医師とかかりつけ医が事前に合意し、その処方方針に従って減薬した場合の評価として「かかりつけ医連携薬剤調整加算」(125単位/日)が新設された。
さらに、在宅患者の“実態”を最もよく知るケアマネジャーに、訪問介護事業所等から伝達された利用者の口腔に関する問題や服薬状況、モニタリング等の際に把握した利用者の状態等について、主治医や歯科医師、薬剤師に必要な情報伝達を行うことを義務づけた。
ダブル改定のメリットは、診療(調剤)報酬改定で実施することを、介護報酬改定にも同時に反映できることだ。薬局や介護施設、そして自治体が一斉に減薬に取り組むことになる。これまで以上に「適正使用」を意識した活動が重要視されるだろう。
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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。