2005年2月に出版した『<イラスト図解>病院のしくみ』の23回目の増刷が決定した。増刷の際には、掲載しているデータを毎回最新のものに更新する。 


 日本の病院数を紹介している項目では、厚生労働省の「医療施設(動態)調査・病院報告」を用いながら病床の規模別にみた施設数を解説している。 


 日本では中小病院が多く、全体の4分の1の病院が50~99床である。これが当該ページのメッセージなのだが、今回の修正作業では、400~499床の病院数「389」(2016年)がどうしても気になった。 


 理由は、2018年度の診療報酬改定で大病院の“定義”が「500床以上」から「400床以上」に下がったからだ。「500床以上」の418病院とほぼ同数の400床台の病院数が大病院の仲間入りをすることになる。 


 具体的に、診療報酬改定で大病院が「400床以上」になったとは、どういうことなのか紹介しておこう。 


 まず、もっともわかりやすいのが、紹介状がないにもかかわらず大病院を受診した際に「定額負担」を課す件だ。改定前は「特定機能病院及び一般病床500床以上の地域医療支援病院」を対象に、初診は5,000円(歯科は3,000円)、再診は2,500円(歯科は1,500円)を徴収することになっていた。これを今回の改定では、一般病床400床以上の地域医療支援病院が追加された。 


 もうひとつの大きなポイントは、「初診料」と「外来診療料」(一般病床が200床以上の病院の再診料)に設定されている紹介・逆紹介率が低い▼特定機能病院▼一般病床500床以上の地域医療支援病院▼(特定機能病院以外の)許可病床数が500床以上かつ一般病床が200床以上の病院――に対する“減算”だ。こちらも「500床以上」の記述が「400床以上」に変更されている。


  地域医療構想に伴う病床再編の流れを受け、届出数の増加が期待される「地域包括ケア病棟入院料」にも“500床以上の病院は、届出は1病棟まで”というルールがあるが、これも「400床以上」にスライドされた。 


「在宅患者緊急入院診療加算」と「在宅患者共同診療料」は、500床以上の“在宅療養後方支援病院”の場合は算定できる患者の対象が狭いのだが、これも「400床以上」に下げられている。 


 今回、大病院が“倍増”する影響はどうなるのだろうか。ぜひ、MRやMS同士や得意先の先生を交えて意見交換してみよう。 


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川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。