先週、WEB講演会に出演した際に「今回の改定で最も大きなポイントは何ですか?」という質問を受けて回答に困った。 


 どうしても「項目」をひとつ挙げろと言われたら、大病院の定義が「400床以上」に引き下げられて患者への自己負担増になったこと、さらには紹介・逆紹介率が低い大病院が30日以上の長期処方を行った場合に、処方料・処方箋料・薬剤料を40/100(改定前は500床以上で60/100)で算定しなければならなくなったことを最も大きなポイントと答えるだろうが、大きな枠組みでとらえれば、厚生労働省が“いろいろあきらめたこと”が最も大きなポイントではないだろうかと思っている。 


 なかでも驚いたのは、「特別の関係」の緩和だ。特別の関係と聞くと男女の関係のように思われるかもしれないが(笑)、開設者・代表者が同一だったり、親族等(事実上婚姻関係と同様の事情にある者などを含む)だった場合のことを指し、算定できない診療報酬項目を設定している。 


 その「特別の関係」について2018年度の診療報酬改定では、▼在宅患者緊急入院診療加算▼精神科救急搬送患者地域連携受入加算▼入退院支援加算1▼精神疾患診療体制加算▼ 退院時共同指導料1及び2▼在宅患者連携指導料▼在宅患者緊急時等カンファレンス料▼施設入所者共同指導料――といった入退院時の連携を評価した報酬を「特別の関係」でも算定ができるように緩和した。算定できるようになったうえに点数が上がった項目もある。 


 この緩和は、連携が思ったように進まないと地域包括ケアシステムを構築できないので、連携を推進してくれれば「特別の関係」でも構わないというメッセージだろう。 


 医師等の従事者の常勤配置に関する要件の緩和(小児科・産婦人科・精神科・リハビリテーション科・麻酔科等の領域を中心に)や専従要件の緩和(緩和ケア診療加算など)も施設基準を厳しくしても届出意欲が高まらないために“あきらめ”て緩和したのだろう。 


 また、在宅療養支援診療所(在支診)ではない診療所による在宅医療への取り組みを評価したのも、在支診を増やすことをあきらめたように感じる。 


 しかし、今回の一連の“あきらめ”が医療・介護連携やチーム医療を促進させることにつながるかもしれない。取れないと思っていた点数を取れれば、医療機関としてもモチベーションが上がる。“つなぐ役割”としてMRやMSの活躍の場も増えてくるだろう。 


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川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。