第2回みんなで選ぶ薬局アワードが5月20日に開催され、「このみ薬局 大曽根店」の「保険薬局でのグラム染色を活用した抗菌薬適正使用」が最優秀賞を受賞した。 


 一般の人も数多く参加していたが、他の薬局はこれくらいの努力もしていないのか?と思ったのではないだろうか。少しの努力で薬局の“日本一”になれるのが実情なのかもしれない。


  製薬企業がこれから勝つには何が必要だろうか。非常にシンプルな戦略は2つある。「早く出す」と「早く売る」だ。これに地域包括ケアの時代は「ポテンシャル通りの売上げを実現する」が戦略として加わってくる。


  売上げを高くするには、顧客とのコミュニケーションを深くするほかない。そのためには、①企業として地域の課題をサポート(例:連携協定)、②支店・営業所として得意先をサポート(施設・多職種連携。支店開催ウェブ講演会)、③MRとしてOne Patientをサポート(One Patient Detailing)――の3つのプロセスが重要になる。 


 連携協定では、次のような事例がある。連携協定は、地域との“お墨付き”をもらう意味でも効果的だ。 


⇒塩野義製薬:発達障害の理解促進と支援▽薬物乱用防止▽こどもの未来支援 


⇒大塚製薬:健康づくり文化の定着と健康寿命の延伸を 


⇒武田薬品:地域医療・介護などの推進 


⇒エーザイ:認知症をみんなでささえるまちづくり 


⇒GSK:地域医療データの活用による健康・医療情報産業の活性化の支援 


⇒ノボ:糖尿病対策 


⇒中外製薬:がん検診等受診率向上推進  


 もちろん、企業だから利益を考えて連携協定を結んだと思うが、そのゴールは「健康寿命」の延伸だと思う。


  支店や営業所は、薬をどのように使えば「健康寿命」の延伸に貢献できるのか?「健康寿命の延伸」=「重症化予防」と置き換えて考えてみることが求められる。自治体は「保険者努力支援制度」や「データヘルス」により2018年度から“本気”になっている。自治体を巻き込むには連携協定は強みになる。自治体は、未受診と脱落患者をひろう役割を担うことになる。


  今後は、本社が支店や営業所に長期的な視点の指示ができるか否かが、数十年後の企業価値を左右するだろう。言い換えると、長期的な予後に好影響を与えない薬剤は処方されなくなるに違いない。


  MRには、ますます地域の将来を踏まえたOne Patient Detailingが求められることになる。地域のアウトカムに関連したディテーリングができないMRは、衰退することになる。 


………………………………………………………………… 川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。