先週土曜日に某地方銀行が開催した“介護問題”セミナーを受講した。予定されていた会場を変更する旨のお知らせが事前に届いたほどの盛況ぶりだった。
参加者の多くは「制度」と「(ケースごとの)サービスの選び方」に関心があったと思うが、セミナーの2/3がいわゆる健康番組などでよく観る筋力や認知機能チェックの紹介が占めてしまい、ちょっと期待外れだったかもしれない。でも、他の参加者が「総合事業」(介護予防・日常生活支援総合事業。自治体が独自にサービス内容と価格を決める)の存在を知っただけでも価値があったと思うし、そもそも介護問題を抱えた際には、地域包括支援センターにまずは相談することをオススメしたい。
定年後に30年以上も生き続ける「人生100年時代」に、不安しか感じられないという人が多い。アクサ生命が20代~60代の男女1000名を対象に行った意識調査によると、「人生100年時代において、あなたは100歳まで生きたいと思いますか?」という問いに対し、「あまりそう思わない」(41.9%)と「まったくそう思わない」(36.9%)を合わせて78.8%が「100歳まで生きたいと思わない」と答えたという。同様に約8割が長生きをリスクと考えており、▼身体能力の低下▼収入の減少(賃金不安)▼年金制度――が、長生きの3大リスクとして挙げられている。
このうち、身体能力の低下に対する不安への対応では、各自治体の「総合事業」を含めて地域格差が大きくなることが予想される。厚生労働省が4月にまとめた「高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン」には、「複数の慢性疾患を保有し、フレイルなどを要因とする老年症候群の症状が混在するため、包括的な疾病管理がより重要になる」「医療のかかり方として、多医療機関受診、多剤処方、残薬が生じやすいという課題がある」などの後期高齢者の課題に対し、各プレイヤーの役割が示されている。
例えば、広域連合には、①保有する健康・医療情報の積極的な活用、②市町村への円滑な情報提供、③市町村の事業実施の支援、④関係団体等との連携――が求められており、市町村には、広域連合から提供される健康・医療情報等を活用して地域の疾病構造や健康課題を把握し、地域の関係団体と問題認識を共有することが求められる。
残念ながら、製薬企業などへの言及は見当たらないが、ガイドラインのなかで言及されている①生活習慣病等の重症化予防に関する課題、②服薬に関する課題、③栄養に関する課題、④口腔に関する課題に関する情報提供・収集活動が地域のアウトカムによい結果をもたらすだろう。
長生きしたいと高齢者が思えるような地域づくりに貢献したいものだ。
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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。