「取れるもんなら取ってみろ!」。2018年度調剤報酬改定における調剤基本料の再編と「地域支援体制加算」の新設は、大手調剤チェーンへの厳しい挑戦状となった。


 現に、日本調剤が8月7日に発表した2019年3月期第1四半期決算説明資料によると、改定前に85%だった「調剤基本料1」の店舗割合が改定後の2018年6月には48%に激減し、代わりに処方箋受付回数が40万回超の調剤チェーンのうち集中率85%超の店舗をターゲットにした「調剤基本料3ロ」の割合が50%に達している。


「地域支援体制加算」は「調剤基本料1」の店舗であれば、▼麻薬小売業者の免許▼在宅患者薬剤管理の実績▼かかりつけ薬剤師指導料等に係る届出――を満たしているとみなされ、改定前の「基準調剤加算」と同等の算定難易度だ。その証拠に、日本アルトマークが7日に発表した薬局調査では、基準調剤加算算定薬局の81.9%が「地域支援体制加算」を算定(2018年6月1日時点)していることが明らかにされている。しかし、「調剤基本料3ロ」で「地域支援体制加算」を算定している薬局はゼロだ。「調剤基本料3イ」(処方箋受付回数月4万回超40万回以下)もゼロで、「調剤基本料2」(処方箋受付月4000回超かつ集中率70%超など)がかろうじて1軒ある。


 どうして「調剤基本料1」以外の店舗では、“ほぼ全滅”なのか。それは、「調剤基本料1」には求められていない“地域医療に貢献する体制を有することを示す相当の実績”の8つの条件を満たさなければならないからだ。


 その8つの条件は下記のとおり。


①夜間・休日等の対応実績:400回


②麻薬指導管理加算の実績:10回


③重複投薬・相互作用等防止加算等の実績:40回


④かかりつけ薬剤師指導料等の実績:40回


⑤外来服薬支援料の実績:12回


⑥服用薬剤調整支援料の実績:1回


⑦単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績:12回


⑧服薬情報等提供料の実績:60回


 この8つの条件を常勤薬剤師1人当たり1年間にすべての実績を満たさなければならない。「かかりつけ薬剤師(薬局)になりたければ、これくらいやってみろ」という厚生労働省の気持ちが込められている。


  日本調剤はこの8項目をKPIとして取り組み状況をトレースしているという。 



  7項目の取り組み状況が70%以上となっているが、「服用薬剤調整支援料」だけが1.5%と桁違いに少ない。同支援料はいわゆる“処方医に対する減薬の提案”を評価した新設項目で、6種類以上の内服薬が処方されていた患者について、薬剤師が文書を用いて処方医に減薬を提案し、2種類以上減少した場合に、月1回に限り125点を算定できるというものだ。


 残念ながら、流行りの配合剤への変更提案で減薬した場合はカウントされないため、本質的なポリファーマシーの解消が求められる。


 日本調剤を含む大手調剤チェーンにとっての課題は、“処方医への提案”なのかもしれない。MRやMSならば、重要な担当薬局の8項目の取り組み状況を把握しておきたい。 


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川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。