講演で全国各地に出かけた際に、RIZAP(ライザップ)の店舗をよく見かける。ライザップと言えば、テーテッテケテー♪のテレビCMで一気に知名度を上げたボディメイク事業(理想のカラダを作るプライベートジム)がメイン事業だ。2ヵ月で30万円以上と言われる費用にもかかわらず、会員数は2018年2月に10万人を超えた。店舗数は2019年3月期中に200店舗に届く勢いだ。


  RIZAPは、短期間で最大の結果を出すトレーニング▼しっかり食べて痩せる食事管理▼徹底的な寄り添いで挫折させないサポート――というメソッドで結果にコミットしてきた。現在は、RIZAPゴルフ、RIZAPイングリッシュ、RIZAPクック(プロのシェフによる個別指導)など、事業を拡大中だが、これらのサービスに共通するのは「2ヵ月で人生を変える」ということだ。人生を変えられるからこそ、会員は高額なコストを支払う。


 “期間を区切り”“目標値を両者で決めて”“結果にコミットしてサポートする”というビジネスの流れなので、いずれは、結婚相談所ビジネスを始めるかもしれない。「2ヵ月で婚約させる」と言えば、婚活にはげむ人たちが殺到するのではないだろうか。


  しかし、ダイエット、英語、ゴルフ、料理に共通するのは「個人の努力が結果に必ず結びつく」ことだ。婚活には“相手”がいることなので、努力が結果に結びつくとは限らない。同じように、営業コンサルなどもRIZAPで扱うのは難しいだろう。


  RIZAPは医療業界にも着々と入ってきている。長野県伊那市とは日本初の「成果報酬型」健康増進プログラムを契約し、プログラムで「10才若返った」人数&プログラム参加者の「医療費削減額」(2019年)の双方を試算し 、成果が高い方について自治体が報酬としてRIZAPに支払うことになっている。


  先週、仙台で講演した際、開業医の先生から「最近目先のことしか考えてなかったけど、10年後のことを考えなくては!と思いました」と言っていただいた。私は「地域包括ケアって何?」という多くの方から寄せられた疑問に対し、書籍『地域包括ケアとは、○○である』を出版して、その質問への回答を提示してきたが、最近の講演会では「10年後の(地域の)アウトカムを考えて、目の前の患者に対して治療を選択することが地域包括ケアだ」と話している。


  例えば、高齢者に対する認知症などのアセスメントを積極的に行うことで、早期発見・早期治療に結びつき、結果として10年後のアウトカムを良くすることにつながるだろう。地域包括ケアに役立ちそうなアセスメントツールは、千葉県医師会のサイトなどに紹介されている。


  医療関係者の視点を「目先」から「10年後」に移すことも、MRやMSの役割になる。


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 川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。