インタラクティブソリューションズ、有限責任監査法人トーマツ及びデロイト トーマツ リスクサービス、Dr.JOY、ACメディカル――。2019年4月1日から適用される「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」をビジネスチャンスと捉え、同GLに対応した支援システムのリリースを発表する企業が続いている。


 GLの“ハイライト”は、MSLもMRと同様に(雇用するすべての者等は)GLの適用範囲になることと、経営陣は販売情報提供活動監督部門を設置して定期的なモニタリングを行うなど、全責任を負わなければならないことが明記されたことだ。


 MRの活動自体への影響は、従来と大差はないと思うが、責任が問われる経営陣からの“プレッシャー”が強化されることは間違いなさそうだ。


 いずれにしても、ルールが強化されることで、「能動的」な情報提供活動は窮屈になっていく。“呼ばれるMR”以外のMRの面談数は減少していくことになりそうだ。


 さらに、AI、ICTの進化がある。MRや営業所長向けに講演すると、あるスライドのところで悲鳴のような声があがる。木村情報技術が開発中の「ゴーストプレゼンター」というAIだ。


 ゴーストプレゼンターは、企業が作成してアップロードしたパワーポイントの内容をコンテンツとして保存し、視聴者である医師や薬剤師が視聴したいタイミングに、視聴者の希望に合わせて、AIがコンテンツを修正してプレゼンするシステムだ。


 例えば、DPP-4阻害剤「ミツルブリプチン」(実在しません)で副作用「急性膵炎」の症例を尋ねると、AIが資料を提示してくれたり、3分間・ミツルブリプチン・高齢者と入力すると、指定された時間内に希望の内容をAIがスライドをアレンジしてプレゼンしてくれるというものだ。


 所長たちの悲鳴の理由は「これがあったらMRがいらなくなるんじゃないか」という不安からくるものだという。


 私の考えは真逆だ。確かに、知りたい情報が知りたいタイミングで得られるようになれば、そこに人が介入しなくてもよくなる。一方、医師等が情報を仕入れる際に企業のオウンドメディアに搭載されたAIなどで賄うと、これまで以上に効率的に情報収集ができるようになる。その結果、情報を収集した結果として生み出される「こういうケースではどうなんだろう?」といった“好奇心”が「呼ばれるMR」に電話やメールをするドライバーになる。


 GLでは、未承認薬・適応外に関する情報について、医療関係者から求めがあった場合には、当該情報を当該医療関係者に提供することは差し支えないこととされた。つまり、能動的にはNGだが受動的にはルールの範囲内でOKというわけだ。


 MR自身も、呼ばれていない、アポイントもない状態で訪問するよりも、呼ばれて訪問するほうが、やりがいも増えるに違いない。


 企業は、GLをきっかけにMR活動に制限をかけるだけでなく、MRが呼ばれる仕組みと教育を強化すること。MRは、AIやICTの進化を歓迎して、先生から呼ばれる“数人”のレベルに入ることを意識して活動することが勝ち(価値)残りのカギになる。


 GLやAIが、MRと医療関係者の関係性の“次元”を変えるよいきっかけになると思う。


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川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。