MRが来院すると自動的に院内の医師に通知される。医師がそのMRと面会したくなければ“拒否”のアイコンを押せばいい。MRも会えるチャンスがないのに院内で長時間待つ必要がなくなるから、お互いに効率的に仕事ができるWin-Winのシステムになるだろう――。富士通が2015年に「FUJITSU ヘルスケアソリューション eMe delivery」を発表した時は、一気にこのようなシステムの導入が進むと思っていたが、現状はアポイントを調整するシステムの導入が中心になっているのではないだろうか。


 一方、「20%還元キャンペーン」「100億円キャッシュバックキャンペーン」の“バラマキ”で一気に知名度を上げたPayPayに代表されるスマホ決済サービスだが、筆者はまだ使う気にならない。使える店舗・サービスがPayPayやLINE Payなど、それぞれのサービスごとに異なるため、使い勝手の悪さが気になるからだ。その点、中国のアリペイとウィーチャットペイの2大モバイル決済サービスの市場は急拡大しており、その利用者は6億人を超えているという。


 私が注目しているのはモバイル決済サービスではなく、アリペイを運営するアリババグループが手掛けている芝麻(ジーマ)信用だ。前職のユート・ブレーンで20年以上一緒に働いた中国医薬品市場コンサルタントの沈友敏さん(シード・プランニング)に芝麻信用のことを教えてもらった。


 芝麻信用はアリババグループのアント・フィナンシャルサービス傘下の独立した信用サービス機構で、信用点数化は以下の5つの領域に分けて行われている。 (1)身分特質(社会的地位・身分、年齢・学歴・職業など) (2)履行能力(過去の支払い状況や資産など) (3)信用歴史(クレジット・取引履歴など) (4)人脈関係(交友関係及び相手の身分、信用状況など) (5)行為偏好(消費の特徴や振り込みなど)  上記の5つの領域について個々人の点数を最高の「信用極好」(700~950:極めて良い)から最低の「信用較差」(50~550:やや劣る)まで5段階に分類しており、一般的な消費者はおよそ600点台だそうだ。  スコアが高ければ金利の優遇を受けられたり、ホテルの予約も補償金が不要になる。婚活では700点以上を希望などの指定もある。


 もし、芝麻信用のような仕組みが日本のMRの評価に応用されたら、冒頭の富士通のシステムよりもはるかに使えるシステムになりそうだ。  転職市場では“MR信用700点以上”と募集要件に書かれたり、「当院の担当者はMR信用750点以上のMRにしてください」と有名病院から指定されるかもしれない。


…………………………………………………………………

川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。