働き方改革関連法案に注目が集まっているが、医薬品業界にとっては薬機法(旧薬事法)改正のほうがインパクトの強さを感じる。


 企業サイドは、先駆け審査指定制度と条件付き早期承認制度を盛り込んだ「高い品質・安全性を確保し、医療上の必要性の高い医薬品・医療機器等を迅速に患者に届ける制度」と、過去の不祥事を踏まえた「医薬品・医療機器等の製造・流通・販売に関わる者に係るガバナンスの強化等」の2つが経営に影響を与えそうだが、現場のMRやMSは、“薬剤師・薬局のあり方”を追い風にできるようにしたい。


 約10年前、病院薬剤師、薬局薬剤師ともに“第5ステージ”を迎えていることが関係団体から示された。


 病院薬剤師は、外来患者中心(1965年~)→外来患者中心(一部新しい業務:1975年~)→病棟への業務展開(分業の進展:1990年~)→入院患者中心へ(2000年~)→入院患者中心へ(チーム医療・薬薬連携・退院時指導等:2007年~)の順に、業務が種類・量・質ともに激変した。


 一方、薬局も第1世代:調剤のみ→第2世代:処方内容の確認等→第3世代:患者インタビュー・薬歴管理等→第4世代:薬薬連携等→第5世代:カウンセリング・後発医薬品の調剤・在宅調剤・多職種連携等――と変化を遂げてきた。


 この10年間、“第6ステージ(世代)”への進化の話はあまり聞かなかったが、今回の薬機法改正を機に、薬剤師(特に薬局)は“強制的”に新次元の仕事に取り組まなければならなくなる。


 その新しい仕事とは、「薬剤の服用期間を通じて、一般用医薬品等を含む必要な服薬状況の把握や薬学的知見に基づく指導を行うこと」。これがまず必須の業務になる。  この必須の仕事をベースに、1月30日付のRISFAXで報じられた、在宅医療や一元的・継続的な情報連携を担う「地域療養支援薬局」(仮称)と、がんなどの高度な薬物療法に対応する「専門医療支援薬局」(仮称)をプラスしていくことが求められる。


 特に、「専門医療支援薬局」は、がん診療に長けている基幹病院とPBPM(プロトコールに基づく薬物治療管理:Protocol Based Pharmacotherapy Management)に取り組み、がん患者の服薬状況を、時には電話やSNSを用いてモニタリング・支援することも求められる。  この“服薬期間中”のマネジメントがMRにとってOne Patient Detailing(OPD)による支援を行うチャンスになる。


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川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。