2016年7月に拙著『地域包括ケアとは、○○である』を発売したタイミングと、製薬企業各社が“地域包括ケア担当者”を置くタイミングが一致したおかげで、多くの企業から担当者研修の依頼を受けた。


 地域包括ケア担当には、自分が知事や市長・区長になったつもりで、自分の担当エリアの医療提供体制を整備する気持ちと手腕が求められるが、現実的には、以下の内容がミッションになってくるだろう。


・10年先の未来から現状すべきことを提案 ・自治体に連携協定を提案する ・基幹病院の連携室と強化したい地域での講演会の企画立案 ・連携パス・薬薬連携のサポート ・PBPMの提案 ・薬剤師外来・院外処方箋orお薬手帳への検査値印字の提案 ・地域フォーミュラリーの動向を探り、情報(貢献)不足という理由で自社製品が外されないようにする


 地域包括ケアと実績のつながりが見えにくいという理由から、多くの企業では地域包括ケア担当者に数字を持たせていない。しかし、地域包括ケアは、“底なし沼”のようなもので、「地域に貢献したい」と気持ちが強い担当者ほど、自社製品の実績とかけ離れた取り組みにハマることになる。


 そうなると、現場のMRも「俺たちが稼いだ金で何をやっているのか」となるし、「この講演会がどう売りにつながるのか説明してほしい」という気持ちになるだろう。このままいくと、まったく役に立たなかったと解散することが目に見えている。


 地域包括ケア担当の評価を10%でも業績と連動させれば、担当者は業績の向上を無視できなくなる。


 製薬企業にとって、地域包括ケアとは、「理想的な患者(薬剤)の流れをつくること」である。退院時の処方が徹底されていない。治療の完遂率が低い。アドヒアランスが治療開始半年後から低下している――。これらは、すべて理想的な患者(薬剤)の流れから逸脱することである。


 こうした“ギャップ”の改善を地域包括ケア担当者にミッションとして与えるべきである。売り上げに貢献してくれる担当者なら、現場のMRも歓迎するだろう。


 評価が実績と連動しない職種は、業績が悪化した時に、消滅することになる。製薬企業のリストラは東京オリンピック後に本格化する。このままでは、各社の地域包括ケア担当者はその職を失うことになる。そうならないために、自らの評価を業績と連動するよう経営者に進言すべきである。 


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川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。