静岡県立総合病院が2月8日、ウェブサイト上にお詫びを掲載した。尿中微量アルブミン定量検査のデータを昨年末まで丸6年分誤って取り扱っていたそうだ。検査室で得たデータを電子カルテへ取り込む際の設定ミスらしい。朝日新聞の報道によれば、「現在の検査キットが使われ始めた13年に技師が単位の設定を間違え、そのまま使われ続けてきた」という。 


 この検査の主な対象は糖尿病患者だ。腎臓が傷むと尿中にタンパク(アルブミン)が漏れてくるようになるのはご存じと思う。尿中微量アルブミン検査は、タンパク尿として覚知されるより早く、わずかなアルブミンを検出し定量することで、糖尿病性腎症の発生を早期発見し、糖尿病への介入度合いを変える目安となる。


 静岡県立総合病院では、実際の数値の10分の1で電子カルテに記入してしまったため、この期間に検査を実施した4656人のうち、本来は病期の2期として扱うべき1443人を1期と誤認、同じく3期と扱うべき588人を2期と誤認したという。日本糖尿病学会のガイドラインでは推奨する主な治療法として、1期なら血糖コントロール、2期になると血糖コントロールを厳しくしたうえに降圧が加わり、3期からはタンパク制限食も加わる。


 外部の検査機関に委託した結果と比較したところ、数値が1ケタ食い違ったことから誤りに気づいたらしいのだが、報道やサイトを見ても、どうもスッキリしない部分がある。


 そもそも、なぜ単位の設定などをする必要があったのだろう。  疑問に感じ、検査キットの添付文書をいくつか読んでみて、呆れた。


 結果データが、1ℓあたりのミリグラム数で示されるものと、1㎗あたりのミリグラム数で示されるものと、混在しているのだ。想像するに、静岡県立総合病院で以前は1ℓあたり量の検査キットを使っており、それを㎗あたり量のキットに変更して、しかし電子カルテの設定は直さなかったということだろう。これなら単純明快、数値が10分の1に誤認されてしまう。


 同じような話をあまり聞かないので、キットを変更する際には単位を確認するのが基本中の基本なのだと思う。その手順を漏らしたのは確かに不注意だと思うし、丸6年気づかなかったのも、どうかと思う。  ただ、各病院の技師が、本当にそんな作業をする必要はあるのか。各キットの単位を、なぜ統一しないのか。


 スイッチングコストによってキットメーカーや検査会社からすれば囲い込みできるメリットがあるのかもしれないが、少なくとも患者や医療機関からすれば、不要なコストが発生し、事故のリスクが上がっているだけでないのか。


 この手の「互換性のワナ」が、医療界には多すぎる。


  川口恭(ロハス・メディカル編集発行人)