「そりゃ、淘汰されるだろうね」――。
先週、有名病院の理事長を取材した。最後に同席した某社の所長が「メーカーの講演会はこのままでいいのでしょうか?」と理事長に質問した時の反応だ。
医師側では「あのメーカーの講演会はダメ」「A社の企画は面白かったらしい。行くべきだった」というアナログの“芝麻(ジーマ)信用”のような評価が定着しつつあるそうだ。医療連携を支援する会は数多いが、連携させてどうするのか。「次」が見えないというのが医療現場からみた講演会・研究会の課題・疑問のようだ。
講演会や日頃のMR活動を含めたビジネスの最大の“敵”は「飽き」である(プライベートな関係も飽きたら終焉を迎えることに……)。薬剤は飽きたからといっても、患者に効いていて、患者から求められれば処方し続けるだろう。しかし、特に“切れ味”が好きな日本人の患者には、タミフルの後発品で十分なのがわかっているのに、ゾフルーザを処方したい気持ちもよくわかる。
情報提供をコンテンツと捉えたときに、飽きさせないお手本になるようなビジネスはないか。そこで注目したのが、スタートから3年が過ぎても中高年を中心にブームが続いている「ポケモンGO」だった。
ネットニュースのロケットニュースは2019年1月28日に「ポケモンGOが中高年に人気の理由」を取り上げた。この記事の分析内容は、あとで読んでいただくとして、約2ヵ月前から“飽きない(商い)研究”としてポケモンGOを始めた筆者が、遊び続けてしまう理由を挙げてみたいと思う。
◎毎月1回「コミュニティ・デイ」という3時間限定のイベントが開催され、人気ポケモンが大量発生する
◎まれに色違いのポケモンが出る ◎ポケモンGOの中で友達になった人とポケモンを交換すると15回に1回くらいの割合でポケモンが光り、「キラポケモン」になる
◎プレイを続けているとトレーナー(自分)のレベルが上がる
◎自分がゲットしたポケモンを進化させて、さらに強いポケモンにできる
◎ジム(ポケモンGOのマップ上にある施設。神社や公園、マクドナルドなどのスポンサーショップに設置されている)に自分のポケモンを置くことができ、防衛した時間に応じて報酬(ショップで使用可能なポケコイン)をもらえる
◎ジムで行われる「レイドバトル」(他のトレーナー(プレイヤー)とともに「ボスポケモン」と戦う)により、伝説のレアポケモンをゲットできる
つい先日、東京・日本橋の日本銀行前に100人ほどの中高年が集結していた。時刻は18時半頃。彼らは、仕事帰りにレイドバトルに集まってきていたのだ。
同じ業界から学ぶことは、あまり期待できない。過去の踏襲が中心になるからだ。ポケモンGOのような仕組みを、いまのビジネスに応用できないだろうか。
これからの時代は、同じことを続けると、すぐ飽きる企業人(MR)が活躍する時代だ。自分が飽きているなら、きっと顧客も飽きている。
我われは、ポケモンGOに学ぶべきなのかもしれない。
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川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。