「モニター報告があった内容について業務記録に記載がなければGL違反になる」


「GLの対象は新薬メーカーだけではないが、製薬協に属していない(後発薬)企業は、4月までに対応できないのではないか」


「たとえ、ひとりのMRの不正行為であっても、会社全体の責任となり得る」(ディオバン事件において、ノバルティスの責任を問うことができなかったことが背景にある)


「WEB講演会も将来的には当局が監視できるように指導が入る」


「当局は、監視・取り締まりのための手段の確保をめざしている」


 2月22日に都内で開催されたIQVIA(ユート・ブレーン)セミナー「製薬企業のプロモーション・情報提供の規制強化を考える」の参加者は、帝京平成大学薬学部の白神誠教授の講演を聴いて、「これはマズイことになった」と、胃が痛む思いをしたのではないだろうか。冒頭のモニター報告と業務記録の突き合わせについては、MRが“冤罪”を主張したらどうなるのか。当該MRが担当する他の医師への聞き込みなども行われるだろう。


 白神教授の講演内容には筆者も驚いたが、もっと驚いたのは、済生会横浜市南部病院の佐藤透薬剤部長(神奈川県病院薬剤師会会長)の講演だった。


 驚いた理由は、優秀なMR(アポイントが取れて副作用情報収集も含め、さまざまな活動ができていて講演会の案内の割合は少ない)と、活動の9割が講演会の紹介というダメMRの比較を佐藤部長がしたうえで、MRに必要な視点として拙著『MRバブル崩壊時代に勝ち残る7つの眼』(絶版)を紹介していたからだ。


 同書は、MRバブルの崩壊を予想して06年に出版したものだが、その後もMR数は増え続け、バブルは崩壊しなかった。しかし、13年遅れてMRバブル崩壊の波が押し寄せている。


 佐藤部長は講演後に「何度読んでもやっぱり、これだなと思います」と7つの眼を評価してくれた。 (1)変化を読む眼 環境変化が、経済・医療・地域・顧客・自社・自分にどのような変化をもたらすか考える (2)顧客を読む眼 顧客のニーズ・ポテンシャルを正確に把握し、将来性を把握しているか。 (3)顧客の感情を読む眼 コミュニケーションの大原則「顧客の“普通”を把握しておくこと」と5つの法則につついて同書の中で解説しています。 (4)経営を見る眼 得意先の経営状態はどうか。戦略を把握しているか。 (5)地域医療を読む眼 医薬品はエリアで売る時代。コミュニティづくりには①耳当たりのよい名前、②ミッション&ルールづくり、③リアルな場、④定期的な情報ツール(LINEやZOOMなど)が必要。 (6)違いを見る眼 繁盛している施設(自社製品の扱いが増えている)顧客は、他施設と何が違うのか。 (7)患者を診る眼 患者のニーズを把握する努力をして、頭の中に患者の存在をインストールしているか。  確かに、今こそ「7つの眼」が求められているのかもしれない。 


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川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。