今週は、新潮と文春が自民党の“魔の3回生”田畑毅議員の準強姦疑惑を責め立てて、議員辞職に追い込んだ。先週、疑惑の第1報をスクープした新潮は、第2弾で『警察が「安倍官邸」に忖度する 「田畑代議士」準強姦捜査の腰砕け』と報じている。


 それによれば、愛知県警は被害女性が2月に刑事告訴をする以前、昨年末の段階から事件を把握していたが、例によって捜査は“腰砕け”になりそうだという。背後には官邸の二階派への“配慮”があり、また警視庁刑事部長時代、安倍首相と近しいジャーナリスト・山口敬之氏による伊藤詩織さん準強姦疑惑をもみ消した中村格氏が、今回は警察庁官房長というポストにいて、足繁く官邸に通っているらしい。


 新潮に先を越された文春は『「ビデオを回しながら高2の私を」


 田畑毅議員に未成年淫行疑惑』と、さらに悪質な“余罪”を発掘して抜き返した。自民党離党でお茶を濁そうとしていた田畑氏の息の根を止めたのは、むしろこちらの記事だった。 


 女性問題というよりも性犯罪であり、議員であろうとなかろうと、刑事罰が必要なケースだが、現在の政界には、モリカケといい統計疑惑といい沖縄問題といい、政治家や官僚がその本務で日々、ウソをつきまくる現実がある。ぜひとも両誌には、そちらの方面でも頑張っていただきたい。


 沖縄といえば、2月24日の県民投票で、辺野古埋め立ての「反対」に7割を超す民意が示された。週初めに発売される週刊誌各誌は〆切に間に合わないタイミングだが、ギリギリで報道できる文春や新潮も音無しの構えだった。


 過去5年、沖縄に入り浸ってきた経験で言えば、ネット上の沖縄への非難やテレビ出演者の“中立的コメント”は、悲しくなるほどに無知丸出しのレベルである。たとえば、尖閣で有事が起こっても、5割以上の確率で米海兵隊は訓練地・沖縄を留守にしていること、出撃する場合も(まずしないが)佐世保の輸送艦を待たねばならないこと、もともと海兵隊基地は岐阜や山梨にあったこと、沖縄駐留は政治的理由だと裏付ける資料や証言がヤマのように見つかっていることなど、現地で“常識”になっている知識がことごとく、本土では共有されていない。歴史への無知はそれ以上だ。ヘイト本以外の専門書を5~6冊読めばわかることなのに、その程度の努力もせず、みなが沖縄を語りたがる。


 週刊誌報道では文春が翁長・前知事の当選後、ヘイトじみた記事を多少書いていたが、その後はぱったりと沖縄報道をやめてしまっている。従来のスタンスに無理があったことに気づいたのかもしれないが、それでもなお、安倍支持の読者層の顔色が気になるのか、沖縄寄りの姿勢に改めることもなく、押し黙ってしまっている。


 一方の新潮は、休刊した『新潮45』を含め、篠原章という元学者の“お抱えライター”が過去数年、ひとりでネチネチと“沖縄ディスり記事”を書き続けてきた。週刊新潮の先週号においては、《県民投票で「どちらでもない」が埋め立てに「賛成」を上回ることはほぼ確実で、「反対」を脅かす数字にまで成長する可能性がある》というびっくりするような記事を書いていた。実際の結果はといえば、ご存じの通り、「反対」が72.2%、「賛成」は19.1%、「どちらでもない」は8.8%だった。  沖縄専門家を自称するこの人物、いかに常日頃、気心の知れた“在沖縄ネトウヨ”にしか情報を得ていないか、とてつもない赤っ恥をかくことになった。さすがに一日二日では言い訳を思いつかなかったのか、今週は選挙結果をスルーしているが、このライターの厚顔ぶりはかなりのものであり、そのうちまた、今回の大チョンボをなかったことにして、いつも通り沖縄叩きを再開するのだろう。


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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。最新刊に沖縄県民の潜在意識を探った『国権と島と涙』(朝日新聞出版)がある。