「HELLO, OUR STADIUM」という催しに参加した。令和元年末を控えた12月21日に行われた新国立競技場のオープニングイベントだ。


 コトの発端は9月のある飲み会。20人くらいいても、「オリンピックのチケット当たった!」と喜ぶ人はひとり、ふたり。ところが、「チケットは当たらなかったけど、ウサイン・ボルトが出るイベントのチケットを買ったから競技場は見られる」というT氏。大手電気メーカーを60歳ですっぱり退職し、「オリンピック期間は関連の厨房で働く」という熱心さだ。


 ともあれ、「そんなイベントもあるのか」と出演者確定の前に、いちばんお安い「カテゴリー3」のチケットを購入した。


 さて当日。開場は16時半、開演は18時半。入場が集中するのは何時くらいだろう、と悩んだ末、前倒しで16時過ぎに千駄ヶ谷駅へ。最寄りの千駄ヶ谷ゲートではなく、自席に近い外苑ゲートに回ると思いのほか長くは待たず入場できた。ホームページでは「顔写真付身分証明持参」を求められていたものの使うことはなく、簡単な手荷物検査を経て、チケットのQRコードをかざしてスタジアム内へ。各階入口では全員にお土産のタオルが手渡された。


スタジアムに向かう人たち 


記念のタオルと新聞 


 地上の人は「蟻くらいの大きさ」と想像していたが、「カテゴリー3」でもピッチやトラックは案外よく見渡せる。20度→29度→34度と上へ行くほど席が急傾斜になっているかららしいが、「せっかくの記念に」と連れて来られた高齢者にはひやひやした。付き添いがいても、杖を突いていると移動がキビシイ。


 選択の余地があれば、旧競技場の40席から500席に増えたという車椅子席を利用したいものだ。同エリアには車椅子で使えるトイレや休憩室も備えられている。一般用のトイレも男女各20か所から各50か所程度に増設したとかで、トイレ待ちのストレスは少ない。階下から上がった場所に近いトイレは長蛇の列だったが、少し歩いたトイレはガラガラ。場内を少し回って様子を見るのが得策だ。


「カテゴリー3」から見た場内 


車椅子エリアから見た場内 


車椅子用トイレと休憩室が隣接 


 飲食物は「瓶・缶入りの飲み物」を除き、持ち込み可能。場内の売店では、カツサンド、牛丼、唐揚げ、ラーメン、シウマイや、アルコールも販売されている。珍しさはないが、海外からの観客にとっての「日本食」は結構揃うかもしれない。


 イベントは、太鼓芸能集団・鼓童や東北6県の主な祭りが集う「東北絆まつり」、ピッチ上での三浦知良さんのドリブル初め、リーチ・マイケルさんやラグビー関係者のコメントから、ドリカム、嵐のミニライブ、オリパラおよび男女混成の陸上選手が4チームに分かれて競う「ONE RACE」へと進んだ。


 開始前、司会者から「最後に会場が暗くなったらスマホのフラッシュライトをつける演出に協力してくださいね」と言われ、内心(アーティストの写真撮影NGなのにスマホを使わせるのか)と思いながら予行。本番では、ゆずがサプライズ登場し、皆で明かりを揺らしながら『栄光への架け橋』を口ずさんで終了した。


来場者のスマホを利用したラストの演出 


嘉納治五郎先生が見守るオリンピック 


 そこまではよかった。大変だったのは閉会後。6万人近くの観客が一度に帰宅したが、バイト係員の誘導がつたなく、塀に囲まれた敷地内から外に出るのに40分ほどかかった。スタジアムというハードは同じでも、運用にはまだまだ試行・改善の余地がある。


 酷暑や荒天時の対応、周囲への音漏れ、オリパラ後の活用や維持費など、課題は多く挙げられている。だが、せっかくの機会だ。運よくチケットを入手した人も、そうでない人も、前向きに「TOKYO 2020」を楽しもう!


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本島玲子(もとじまれいこ)

「自分の常識は他人の非常識(かもしれない)」を肝に銘じ、ムズカシイ専門分野の内容を整理して伝えることを旨とする。

医学・医療ライター、編集者。薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師。