今週、一番のスクープは週刊新潮『「小渕優子経産相」のデタラメすぎる「政治資金」』。大臣の後援会女性部が毎年開いている明治座での観劇会について、参加者から徴収した金額の総計と明治座への支払代金が、政治資金収支報告書で大きく食い違っている、という告発である。 


 その差額を小渕氏側が補填したのなら、格安で観劇のサービスを提供したということで、公選法で禁じられている有権者への利益供与となる。同誌の調べでは、相応の参加費を払ったという証言もあり、だとすれば、帳簿上、消えてしまった金額が存在することになる。 


 新潮の発売日には、国会で早速追及され、小渕大臣が窮地に立たされることになったのは、ご承知の通り。先週“一見”「うちわ」にも見えなくない政策討議資料を地元の祭りで配布したと追及され、コントのような答弁ではぐらかそうとした松島みどり法相に続いて、安倍新政権の目玉女性閣僚がまた、へまをやらかしてしまった。 


 今週、各誌が取り上げているのは、青色LEDの開発でノーベル物理学賞を同時受賞した中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授と、赤崎勇・名城大学教授の長年にわたる確執の話だ。 


 中村氏については、青色LEDの実用化成功の報酬をめぐって、当時在籍した日亜化学工業と訴訟の末、渡米した逸話が知られるが、それに先立って赤城氏らと組んで研究を進めた豊田合成と日亜の間でも、特許を巡る訴訟合戦が繰り広げられていたのだという。 


 そのほか、イスラム国入りをめざした北大生の事件にも、各誌の関心が集まったが、筆者の目にとまったのは、そんな狭間で、ひっそりと現代に載っていた『今こそ、日本は「年功序列」が正しい』というビジネス記事である。 


 ここでは、日立やパナソニック、ソニーが次々と「成果主義」導入を打ち出したことに異を唱える城南信用金庫理事長・吉原毅氏の主張が紹介されている。 


 それによれば、成果主義は90年代に多くの企業が導入したものの、多くの場合、社員のモチベーション低下を生んでしまい、失敗に終わっているのだという。 

吉原氏は「成果主義を取り入れると必ず人間が小さくなる」「(自らの評価を気にするより)『仕事だけを考え、それにじっくり打ち込める』環境がもっとも大事」と訴える。 


 経営的な観点での当否は不明だし、筆者はすでに十数年も前、30代後半にサラリーマン生活を離れているのだが、それでも古い記憶を呼び起こせば、うなずける気がする。 


 成果主義は、要領よく立ち回る者と、本当に評価に値する仕事をする者を厳正に見分けられる上司がいて、初めて成立する。そもそも“要領”でポストを得た者は、部下を公正に見ようとする心根があるかどうかすら疑わしい。人事評価の強化は、得てして職場にギスギスした疑心暗鬼を生むものである。 


 ノーベル賞受賞者の中村氏には、青筋を立てて怒られてしまいそうだが、職場のストレスに負け、脱落した私には、そんなふうに思えてしまうのである。


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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。1998年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。2007年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』(東海教育研究所刊)など。