WHO(世界保健機関)は、2月11~12日に専門家会合を開催。①ウイルスの自然史・伝播・診断法、②感染における動物の役割や環境との関係、③疫学研究、④臨床的な特徴と管理、⑤感染予防と制御(医療従事者の防御を含む)、⑥治療法の研究開発、⑦ワクチン候補の研究開発、⑧研究の倫理、⑨アウトブレークへの対応における社会科学の9項目について話し合った。

 

 このときに、新型コロナウイルス(nCoV)による感染症の正式名称をCOVID-19(Coronavirus Disease 2019)と発表。趣旨は「風評被害や汚名を避けるために特定の地名・動物名・人やグループ名などを用いず、発音しやすい名称」とのこと。第1次世界大戦中の1918~19年に発生したインフルエンザのパンデミック(世界的大流行)は、米国内の基地が起点だったにもかかわらず、中立国のスペインが最初に報じたために「スペインかぜ」と呼ばれるようになったとされる。

 

 COVID-19は、発生源と拡大の契機の両面で後世に「武漢かぜ」と伝えられるかもしれないが、日本も他人事とは言ってはいられない。2月3日に「臨船検疫」を行って以降、横浜港近辺に停泊しているクルーズ船内での感染拡大は、やがて公衆衛生や感染症の教科書に載るだろう。2月12日の英国BBC Newsは「クルーズ船は本当に“浮かぶペトリ皿(培養器)”なのか?」と題した記事で、「高級クルーズ船は主にノロウイルスを想定して乗客への食事提供等の感染予防には万全を期している」「むしろ、肘と肘を付き合わせて生活し働いている乗員が問題」と指摘した。

 

 通常のクルーズでは「お客さま優先」でも、ひとたび感染症が発生すれば乗員にも同等以上の感染リスクが生じる。「感染した乗員が接することで乗客への感染が拡大する」という悪循環も起きる。サービス提供者自身の感染予防は、検疫官や医療者などとも共通の課題だ。 




 最初の国内死亡例が報告された2月13日、さらに感染確定例が複数判明した2月14日を境に、わが国でのCOVID-19発生の局面は明らかに変わった。それから3日と経たないうちに、感染経路を特定できない事例がみるみる増加している。 


 

 2月16日に官邸で開かれた国内の専門家会議では「国内の感染は(現在)発生早期で、さらに進行していくと考えられる」との認識が確認された。新型インフルエンザ対策に準じれば、「感染拡大期」に入ると重症者には「入院にて適切な治療を提供する」一方で、軽症者には「自宅での療養を勧める」とともに「感染を防止するための協力(外出自粛等)を要請する」ことになる。

 

 感染症対策の経験豊富なある専門家は、テレビ番組で「これまでの対策は19世紀と同じ」と本音を漏らし、ITなど「今使える手段を柔軟に利用すべき」との考えを示した。その点、WHOはプレス登録したメディア関係者を対象に、会議用のアプリ「Zoom」を用いた「バーチャル・プレス・カンファレンス」をほぼ毎日開催。ジュネーブで16時(日本時間午前0時)頃から開始し、当日21時頃には最新の状況報告を配信するというスケジュールで回している。また、1月末にはいち早くGoogleと連携し、「新型コロナウイルス」に関わる検索ワードを入力すると、WHOや信頼できる公的機関の情報が結果の上位にくるようにした。

 

 一方、厚生労働省の報道発表にはタイムラグがあり、「公式LINEアカウント」にも今のところ、あまり利便性が感じられない。リンクしている「LINEヘルスケア」では、入力した問い合わせに対し「AIチャットボットが応答し、新型コロナウイルスに関する概要や発生状況、予防法、相談を受けられる場所などの必要な情報を24時間提供する」という(LINE株式会社)。このアカウントでは必要な情報が得られなかったときに「どんな情報が必要か」をトークに入力すると、「今後の改善にいかしていきます」というメッセージだけはたちまち返ってくる。問い合わせした人のニーズをどれほど学習してくれるか、これからのお手並み拝見というところだ。


  

下記より今週の動きが閲覧できます(動画)

https://player.vimeo.com/video/392168740/

 

[2020年2月17日午前0時現在の情報に基づき作成]


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記事・動画作成:本島玲子(もとじまれいこ)

「自分の常識は他人の非常識(かもしれない)」を肝に銘じ、ムズカシイ専門分野の内容を整理して伝えることを旨とする。

医学・医療ライター、編集者。薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師。