新型コロナ騒動が政府の全国一斉休校要請で、いよいよパニック化する様相を見せている。トイレットペーパーの品薄デマで商品が店頭から消え去るなど、人々は相当に浮足立っている。で、今週の週刊文春の目次を見ていると、『総力特集 新型コロナ非常事態』のトップ『「不倫審議官」クルーズ船で問題行動 安倍官邸の戦犯を名指しする』という記事に、箇条書き風に4本の小見出しが立っていて、先頭にはあろうことか『「これで桜が消える」会食三昧安倍首相の油断』なる文言が躍っていた。


 あまりにこれは身も蓋もない……と当該記事を見てみると、さすがに首相自身の談話ではなかった。「官邸関係者」のコメントに、「(国会で)新型肺炎関連の質問が多くなってくると、“これで桜が消える”とばかりに首相の表情が一変、『なんでも聞いてくれ!』と自信満々に(なった)」というくだりがあるだけだ。週刊誌見出しの羊頭狗肉は毎度のことなのだが、少々脱力した。


 とは言っても、身内の官邸関係者にここまで言われてしまうのは(この辺の談話取りを文春は手を抜かずにやる)、親分の胸の内が見透かされているからだ。2年前の総選挙大勝を「(ミサイル危機を煽った)北朝鮮のおかげ」と感謝した副総理もいることだし、どんな“国難”も実際には政権維持にプラスかマイナスか、という私利私欲で考えがちな習性は、米国のトランプ氏同様、安倍政権の特徴にも思える。


 そして、今回の一斉休校要請という度肝を抜く行動である。ウィルス感染の抑制には効果的であるにせよ、経済的・社会的損失の副作用は計り知れない。首相自身は、是が非でも五輪前に収束を、という一心なのだろうが、そもそも「五輪後」の大不況が従来からささやかれるなかで、春先の時点から“コロナ大不況”に飲み込まれてしまったら、秋以降はどんなことになってしまうのか、背筋が寒くなる。


 さて、いつもはウェブ版で読んでいるサンデー毎日を今週、久しぶりに紙で買ってみた。角川春樹氏が往年の角川映画を語るインタビューが載っていたからだ。最近、KADOKAWAの映画「Fukushima 50」に出演する佐藤浩市氏の「角川文庫がスマホで読み放題だと?」という映画・書籍タイアップCMをたまたま見て、「読んでから見るか、見てから読むか」という1970~80年代の角川コピーを懐かしく思い出したのだ。


 あの当時、それなりに映画好きな人たちは、カネに飽かせた角川映画をバカにしていたし(サン毎のインタビューでは、角川氏が黒澤明監督に握手を拒まれた逸話を語っている)、そもそも私自身、自分の本棚に過去、角川の本は常にごくわずかだった。つまり、趣味が合わないのだ(今回のフクシマの映画も、私は原作本をまったく評価していない)。それでも、これほど活字離れが進行してしまうと、角川的なメディアミックスは、業界サバイバルのひとつの方向として再考すべきものに思えてくる。


 奇しくも今週の週刊新潮「佐藤優の頂上対決」のゲストは春樹氏の弟でKADOKAWA会長の角川歴彦氏だ。彼は彼でドワンゴと統合するなど斬新な経営をする人だ。繰り返すが、角川の本、角川的な商法を私はあまり好きではない。それでも、この対談で歴彦氏はネット時代に「知識」が「情報」に劣化したと嘆き、サン毎での春樹氏もかつてと今の映画ファン、小説読者を比較して、そのレベルが「半分以下に落ちています」と憂えている。“文化を軽んじる商売人”と勝手に決めつけて遠ざけてきた角川兄弟だが、それでもやはり出版人、私の見方は少し偏っていたのかもしれないと反省した。


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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。最新刊に沖縄県民の潜在意識を探った『国権と島と涙』(朝日新聞出版)がある。