わが国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発生初期に報告された屋形船での新年会に始まり、ライブハウスやライブバー、ジム、高齢者施設等での集団発生を経て、感染症の文脈における「クラスター」という言葉は、すっかり定着した。


 厚労省は2月25日にクラスター対策班を設置し、3月15日には「全国クラスターマップ」を発表した。WHOの感染シナリオで「クラスター発生」は第3段階にあたる。クラスターは感染連鎖が追える点でまだ「目に見える感染」といえる。しかし、連鎖が追いにくくなったり、感染者数の急増で追う余裕がなくなったりするとステージが変わる。日本は何とか「市中感染」に突入しないように踏ん張っている状況だ。



 厚労省が発表する患者・感染者数は、①国内事例(有症の患者、無症状病原体保菌者、陽性のみ確認し症状確認中の事例)、②チャーター便帰国者、③クルーズ船の事例、④クルーズ船対応等にあたった厚労省等職員や検疫官、⑤空港検疫での陽性判明者に分けられており、煩雑だ。


 また、3月6日までは、①の症例一覧(症例番号、確定日、年代、性別、居住地、濃厚接触者の確認状況等)を掲載していたが、以後は都道府県別の新規報告件数と年代・性別、3月14日からは都道府県別の件数のみになり、代わって米国Esri社による感染マップが掲載された。裏方の視点から「クラスター発生」だけの段階は過ぎつつあると感じたできごとである。


 一方、3月12日からは「都道府県別のPCR実施件数」が、「参考情報」からのリンクとして公表された。現状では「感染者数=PCR検査陽性者数」として表される。ただ、各都道府県における検査実施体制やキャパシティ、適用方針によって、陽性者数が地域の感染実態を反映しているとは限らない。3月13日現在、陽性者ゼロは13県だったが、検査実施数は22件(岩手県)から389件(茨城県)まで大きな開きがあった。


 患者・感染者数が多い、北海道、東京、愛知、大阪は、検査実施の実数も多かった。さらに、単位人口当たりで比較しても、「緊急事態宣言」実施中である北海道の患者数は多かった。一方、一度休診した後に安全宣言をして再開した済生会有田病院がある和歌山県は、人口の割に検査実施数が多かった。



 COVID-19による国内の死者数は3月16日現在22人で、患者・感染者数が多い都道府県に集中しているが、大阪府だけはゼロだ。筆者がExcelに入力していた公表データから主な県の患者内訳をみたところ、大阪府の患者では20~30代が目立つ一方、60代以上が2割以下と極めて少なかった。一方、死亡者が最多の愛知県は60代以上が7割に迫っていた。北海道と東京都の患者は、比較的満遍なく全年齢層にわたっていた。



 素人がデータを比べても、漠然と「この県は患者が多い」と感じる以上のヒントはある。疫学や社会シミュレーションの専門家のためにデータが広く公開されていれば、感染症流行のまっただ中でも次の一手に役立つ情報が得られるかもしれない。流行情報をリアルタイムに集め、集計・分析できる仕組みを平時から構築しておくことが必要なのではないかと感じる。


【最新リンク】

◎新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号、令和2年3月13日改正)

https://www.clb.go.jp/contents/diet_201/reason/201_law_046.html

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=424AC0000000031


◎新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解(3月9日)

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000606000.pdf


◎厚労省「全国クラスターマップ(31512時現在)→下記動画中(2:25)にあります


下記より今週の動きが閲覧できます(動画)

https://player.vimeo.com/video/397906040/


[2020年3月16日午前9時現在の情報に基づき作成]


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記事・動画作成:本島玲子(もとじまれいこ)

「自分の常識は他人の非常識(かもしれない)」を肝に銘じ、ムズカシイ専門分野の内容を整理して伝えることを旨とする。

医学・医療ライター、編集者。薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師。