4月16日、特措法に基づく緊急事態宣言の対象が全国に拡大された。また、4月7日に指定された7都府県と「同程度にまん延が進んでいる」として、「名古屋飛ばし」が話題になった愛知県のほか、北海道、茨城県、石川県、岐阜県、京都府を加えた13都道府県が「特定警戒都道府県」となった。その後もこれらの都道府県では感染者の増加が続き、最も少ない岐阜県でも累積数は137人だ。他に累積数が100人を超える県としては、群馬、福井、広島、沖縄が挙げられる(厚労省発表、4月18日現在)。


 東京都が休業要請を始めてから10日、小中高校等の臨時休校にさかのぼると50日あまり経っていることから、「自粛疲れ」の声も聞かれる。テレワークの推進もあり、主要都市の繁華街での人出や公共交通機関の利用が明らかに減る一方、先週末は身近な商店街での思わぬ混雑、店が営業を自粛している観光地でのマイカー渋滞などがみられた。


 今年の「ゴールデンウィーク」など、あってなきようなものと思っていたが、世の中はそうでもなかったらしい。安倍首相は「今後ゴールデンウィークに向けて、全ての都道府県において、不要不急の帰省や旅行など都道府県をまたいで人が移動することを、まん延の観点から絶対に避ける」ために、今回の拡大に踏み切った。


■欧州に比べて少ないアジアの人流変化


 国内ではNTTドコモの「モバイル空間統計」で人流の変化が推定されているが、地図情報を持つGoogleも4月8日に「COVID-19 Community Mobility Reports」を公開した。Googleによれば、「ロケーション履歴機能をオンにしている(初期設定はオフ)人の情報を匿名化して分析したもの」で、パンデミック以前の今年2月23日に比べて、人流がどの程度変化したかを示している。



 その数値をグラフ化してみると、日本の人流の変化は欧州各国に比べて少ないことがわかった。そこで、各国の行動制限の対象等を調べてみた。


 感染拡大の時期や規模が近いスペインとイタリアは、3月中旬には不要不急の移動・外出等が厳しく制限されており、生活必需品(食料・医薬品等)の購入や公園の利用を含めた人流全体が大幅に減少していることもうなずける。フランスと英国も、人流の減少度は前2国より少ないものの、同様の傾向だ。


 一方、ドイツでは「個人的なスポーツ、屋外での新鮮な空気を吸うための運動」は認められているからか、公園の利用は増えている。


 4月19日現在の累積感染者数は、世界で多い順から①米国69万5千人、②スペイン19万人、③イタリア17万5万人、④ドイツ14万人、⑤英国11万人、⑥フランス11万人という規模。一方、アジアでは、日本が1万人、COVID-19対策の優等生とされる3国のうち韓国1万人、シンガポール5,500人、台湾は400人程度で、欧米に比べれば人流の変化が少ない。


 米国はいまや世界最大の感染国となった割に、人流の変化が少ないようだ。



■1か月自粛での目標達成は


 では、感染者の増加をどの程度抑えられているのか、各日の感染確定数をみると、欧米は絶対数は多いながらも「グラフがおじぎ」してきているという点では、良い兆しがみられる。


 ところが、日本やシンガポールは増加傾向だ。韓国も一度は抑え込んだものの、直近で増加がみられる。「日本の感染者数など欧米に比べればまだまだ少ない」と思うかもしれないが、検査数が桁違いに少ないため感染実態はわからず、油断は禁物だ。


「都市封鎖的措置をとらない」という方針は、シンガポールも日本と同様だが、4月7日~5月4日の4週間を「サーキット・ブレーカー(遮断器)」と称し、必要不可欠な業種以外の閉鎖、学校の在宅授業、原則自宅待機などを行い、感染拡大防止措置を強化している。



 気になるのは、日本より3週間ほど先行して緊急対応体制に入った欧州各国が、いずれも自粛期間を延長していることだ。特にスペインの延長は計3回、期間は2か月に及ぶ。首相自身が感染した英国も、期限を定めず3週間ごとに見直しを行うことにしている。


 安倍首相は4月7日の会見で「私たち全員が接触機会を最低7割、極力8割削減できれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができる」と述べている。しかし、専門家の元々の見解は因果が逆で「約1か月(感染から報告までのタイムラグ2週間を含む)で新規感染者の減少を確認できれば、それは短期で接触8割減を達成できたということ」であった。北海道大学・西浦博教授の試算によれば、「短期で7割減」や「(4割、6割等経て)段階的に8割」であれば、減少の確認まで約2か月かかるという。


「絶対ムリ」と囁かれる「8割減」だが、そもそもの「接触」について、西浦教授は「一人の人が(マスク等なく)相手と1m以内の距離で2~3往復の会話をしたら1接触」「握手するような身体的接触をしたら1接触」などの目安を示している。したがって、この1週間ほどで目にすることが多くなったレジ担当者前のビニールカーテンは「接触」のカウントを減らす手立てにはなる。


 いずれにしても、長期戦が見えてきたことは間違いない。


【最新リンク】

◎内閣官房「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」[2020年4月20日アクセス]

https://corona.go.jp/


◎Google「COVID-19 Community Mobility Reports」[2020年4月20日アクセス]

https://www.google.com/covid19/mobility/


◎コロナ専門家有志の会「人との接触ってどうやって数えればいいの?”という疑問について、私の提案をお伝えします。西浦博(北海道大学)」[2020年4月20日アクセス]

https://note.stopcovid19.jp/n/n1d0745601527


下記より今週の動きが閲覧できます(動画)

https://player.vimeo.com/video/409714658/


[2020年4月20日9時現在の情報に基づき作成]


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記事・動画作成:本島玲子(もとじまれいこ)

「自分の常識は他人の非常識(かもしれない)」を肝に銘じ、ムズカシイ専門分野の内容を整理して伝えることを旨とする。

医学・医療ライター、編集者。薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師。