4月7日に出された緊急事態宣言で定めた当初の期限5月6日を前に、安倍首相は5月末までの延長を決めた。


 これまでの世界の流れをみると、2月中はあくまで「中国やアジアの問題」との認識だったが、3月に入って欧米を中心に国内感染者が急増。3月中旬には国家を挙げての緊急対応に追われ、都市封鎖に近い厳しい行動・外出制限を課す国が増えた。


 国によって検査体制が異なり単純比較できないものの、改めて図示してみると、米国の感染者数は桁違いに多いことが実感できる。渦中の米国を含め、各国が模索しているのが出口戦略だ。


 その中でよく口にされるのが「new normal」という言葉。新型コロナウイルスを直ちに排除するのは難しく、当面は共存していかざるを得ない。そこで、生活の一部を変えて適応していく「新しい日常」とでもいったニュアンスだ。「新しい生活様式」よりは、経済活動を再開し始めた韓国での表現「生活防疫」がわかりやすいかもしれない。



 一方、日本の対策は、輸入例が主な防疫対象だった時期の「水際対策」、集団発生を潰していく「クラスター対策」を経て、緊急事態期に入り、欧米から2~3週間遅れで都市閉鎖までは至らない「ソフトロックダウン」を行い、現在に至っている。



 出口を見通すには、「なぜ、日常生活での行動を変えるのか」について、国民の理解と実行が必須だ。「ドイツでは~」「韓国では~」「それにひきかえ日本は」という「ではの守」話法は慎まねばならないが、BBC Newsで面白い例えをみつけた。「R number」を気にしなければならない世界。Rはいわゆる実効再生産数(reproduction number)、ひとりの感染者が何人に感染させるかの数字だ。


 今はまだ、治療薬やワクチンという「ドリル」ですぐに突破口を開けられない。「かつての日常(normal)」に戻したいのはやまやまだが、行動制限を緩めると「自分たち」の安全が脅かされる。両天秤にかけてバランスをとり、微妙に上下する「R number」の変化に注意を払いながら、暮らしていかねばならない。


【最新リンク】

◎新型コロナウイルス対策専門家会議「新型コロナウイルスの状況分析・提言(2020年5月1日)」[2020年5月3日アクセス]

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/senmonkakaigi/sidai_r020501_1.pdf


◎Coronavirus R0: What is the R number and why does it matter? – BBC News [2020年5月3日アクセス]

https://www.youtube.com/watch?v=iaOm-eF9p-8


下記より今週の動きが閲覧できます(動画)

https://player.vimeo.com/video/414633176/

[2020年5月3日17時現在の情報に基づき作成]


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記事・動画作成:本島玲子(もとじまれいこ)

「自分の常識は他人の非常識(かもしれない)」を肝に銘じ、ムズカシイ専門分野の内容を整理して伝えることを旨とする。

医学・医療ライター、編集者。薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師。