いいかげん、もうウンザリだが、朝日問題がまだ延々と続いている。文春では第6弾とうたっている。現編集長の新谷学氏は、かつてあの山崎拓の愛人下ネタ問題を狂ったような勢いで数十本、連打した人だから、さもありなん、の展開ではあるのだが……。 


 あとそれから、現代とポストについて、前回「今週は休み」と書いてしまった。祭日が2週続いた関係で発売日がずれ、先週は通常の月曜でなく金曜に発売されていた。お詫びして訂正する。だが、双方のメイン記事、朝日特集にこれと言って目新しいものはない。 


 このテーマで思うところは、前回ほぼ、言い尽くした。付け加えるとすれば、朝日の内部事情を奥深く取材しているのは断トツで文春で、その次が新潮、現代やポストはあまりいいネタ元を掴めていないらしい。 


 偶然にもこのところ、それなりの立場にいる朝日の旧友や文春の編集者とそれぞれに話す機会があり、当然のことながら、この件が話題に出た。そのときにも、朝日の友人は「文春は相当、深く調べている」と舌を巻いていた。 


 文春編集者には、前回書いたこと、つまりバッシングする側が自らの足元をまるで顧みない現状を批判したところ、「ウチの社は結局、売れるかどうかだけ。ジャーナリズムの本質を論じる体質はない」と恥ずかしげに認めていた。 


 彼とのやり取りで意見が一致したことは、問題の本質は実は思想的な偏向云々でなく、例えばあの三菱自動車が自社製品の欠陥を隠蔽したケースなどと似たような「日本的な組織のありよう」そのものにある、という点だ。つまりは文春も含め、どの同業者でも、あるいはどの業種の企業でも、同根の問題をたいていは抱えているのである。 


 今週の文春で可笑しかったのが、あの池上彰氏のコラムだ。朝日の木村伊量社長を《国会招致せよ》とぶち上げた写真誌FLASHの見出しに目を疑ったという氏は、まるで子供相手に噛んで含めるように発行元・光文社を諭している。 


 初回のコラムでは取り上げるスペースがなかったが、このFLASHは9月9日発売の号を店頭から回収する騒ぎを起こしている。ネットではテレ朝ディレクターの自殺を取り上げた記事が原因か、という憶測も流れたが、真相ははるかにしょうもないお話であった。米国でセレブのプライベートヌード写真が大量にネット流出した事件で、性行為のカットも含めた違法流出写真10数点をそのまま袋綴じにしてしまい、社の幹部が驚き、回収を命じた、というドタバタである。 


 当の編集部は一切、口を閉ざしている。にもかかわらず、他社には《社長を国会招致せよ》である。読売や毎日の販売店が事件に便乗して朝日批判のビラを撒き、読者獲得キャンペーンを繰り広げる醜悪さにも通じる感想だが、このままでは新聞や雑誌業界全体の沈没を加速するだけだということに、各媒体はそろそろ気づいたほうがいい。 


 このテーマ以外にめぼしい記事は本当に少ないのだが、新潮が『1ドル120円は目と鼻の先 「劇症円安」の資産防衛術』なる特集を組んでいる。雲行きが怪しくなりつつあるアベノミクスへの不安は、2〜3号前から各誌がちらほら取り上げている。 


 というわけで、来週こそ、バリエーションのある誌面を読ませてほしいと思う。


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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。1998年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。2007年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』(東海教育研究所刊)など。