政府や医療現場、さまざまな職場から家庭まで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応に追われているうちに2020年の半分が過ぎた。本来はオリンピックイヤーであったことを考えると情けないが、プロスポーツも無観客試合で徐々に戻ってくるなど小康状態の気分だ。
経済活動の維持と新規感染抑制はトレードオフの関係にあるとはいえ、東京都では6月24日以降、1日に50~60人台の新規感染が続く。一部に新宿区などにおける「夜の街関連」の集団検査による陽性判明を含む数字で、都の対策病床も4,800に対し患者数493(6月30日現在)と確かに余裕はあるが、「正直、嫌な感じ」だ。
6月30日にアンジェス株式会社が大阪市立大学医学部附属病院でDNAワクチンの第1/2相試験を開始するなど、ワクチン開発の動きも活発化している。米国は「ワープスピード作戦(Operation Warp Speed)」で、2021年1月までに「安全で有効なワクチン」3億回分の供給を目指しているが、実現には疑問符がつく。
一方で、病態が明らかになるにつれ、薬物治療を工夫する方向は少し見えてきたといえる。選択肢は「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の複製・増殖を妨げる抗ウイルス剤」とは限らない。炎症やサイトカインストームなどの病態や合併症の有無に応じ、投与経路や既存の適応症での副作用プロフィール、費用対効果などを考慮して使うことが、現実路線かもしれない。
そこで、厚生労働省、日本医師会、日本感染症学会が共通して挙げる主な治療薬候補の現状をまとめた。
なお、表中COVID-19治療薬候補の「観察研究」は「医療機関内の倫理委員会等の手続きを経て患者の同意を得た上で、本来の適応とは異なる投与等を行った治療について、治療結果等を集積し、分析する研究」を指す。
※下表いずれも画像クリックで拡大表示(薬価は2020年6月19日適用分)
【リンク】いずれも2020年7月1日アクセス
◎厚生労働省「治療薬の候補となる薬剤について(6月17日更新)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000640556.pdf
◎日本医師会 地域医療課薬務対策室「COVID-19治療薬候補(2020年5月29日)」
https://www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp/topic/2177
◎日本医師会「新型コロナウイルス感染症外来診療ガイド 第2版(2020年5月29日)」
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20200610_5.pdf
◎日本感染症学会「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第4版(2020年5月28日)」
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_drug_200605.pdf
◎厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に対するアビガン(一般名:ファビピラビル)に係る観察研究の概要及び同研究に使用するための医薬品の供給について」(2020年4月27日付新型コロナウイルス感染症対策推進本部事務連絡に基づく)
https://www.mhlw.go.jp/content/000631044.pdf
[2020年7月1日現在の情報に基づき作成]
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本島玲子(もとじまれいこ)
「自分の常識は他人の非常識(かもしれない)」を肝に銘じ、ムズカシイ専門分野の内容を整理して伝えることを旨とする。
医学・医療ライター、編集者。薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師。