今週の発売号が新春合併号となる文春と新潮は、両誌とも右トップ(吊り広告や新聞広告で右端に置かれるトップ記事)に「小室圭さん」、左トップ(それに準じる左端の記事)に三浦春馬氏自死の関連記事を据え、偶然にもぴったり重なった。前者は新潮では『「美智子さま」ご心痛に「宮内庁」あたふた!「小室圭さん」が「リモート会見」の行方』と銘打たれ、宮内庁長官による「説明責任」発言のあと、改めて小室氏への逆風が強まってきたこと、これを乗り越えるため、小室氏が留学先・米国からリモート会見を行う可能性が出てきたことを報じている。


 文春はここに“スクープ性”を上乗せし、『小室圭さんのいじめで私は高校中退 引きこもりになった』という中高で同級だった女子生徒の「衝撃告白」を載せている。学校で目立つ存在だった小室氏は何人かの級友と、この女子に「ブタ」「デブ」「ブス」といった悪罵を4年間、連日浴びせまくり、彼女はこれを苦に高校を辞めることになったという。


 新潮の記事では、小室家に対する最初の告発者、小室氏の母から数百万円を返してもらえずにいる元婚約男性の話として、婚約中、圭氏の成人式記念撮影を帝国ホテルで行うことになり、愛車ジャガーで母子とともにホテルに行ったのだが、写真に納まったのは母子2人だけ。彼自身は運転手同然に扱われたという「恨み節」を載せている。


 ゴシップはあくまでもゴシップ、読者はただの野次馬だ。当事者である眞子さまや秋篠宮家の受け止めに、口を挟む権利はない。この手の記事を読めば、どうしたって小室氏サイドに悪印象が湧いてしまう。それでも、感想はそっと胸にしまい、成り行きを静観する。それこそが、“正しいゴシップの味わい方”なのだ。誰かを責め立てたり、ネット中傷に及んだりする行為は勘違いも甚だしい。ゴシップ愛好者は、のぞき見を好む自分の性癖を幾分かは恥じてほしい。あくまでも「淫靡な趣味」として楽しむものなのだ。


 左トップのほうでは、新潮が『遺骨・相続トラブル…「三浦春馬」が泣いている』、文春が『三浦春馬実母初告白「遺骨は手元にあります」』。両記事とも、三浦氏の死後、その遺産をめぐって、離婚して久しい両親の対立があることを取り上げている。文春はここでも三浦氏の実母との初インタビューに成功し、取材力の差を見せつけている。


 文春はこのほか、森友疑惑で自死した赤木俊夫氏の妻・雅子さんが、「真相究明」を財務省に求めている訴訟問題も取り上げた。タイトルは『森友赤木さん申立書は「すり替えられていた」』。財務省側はここに来て、雅子さんがかつて夫の「公務中の死」を認めてもらうために署名した申立書を新証拠として法廷に提出した。そこには俊夫氏の自死の原因が、公文書改竄でなく「野党議員の糾弾やマスコミ報道」とされるなど、財務省に都合のいい内容が綴られている。


 しかし、夫と死別したパニック状態のなか、雅子さんにはこの書類にサインした状況が思い出せないという。改めて内容を精査すると、その内容や書式は、財務省が別個に作成した文書と瓜二つで、当時の雅子さんの弁護士が財務省との馴れ合いのなか、省が作成した原案をそのまま文書化したものだったらしい。そんなどさくさ紛れの文言を、国側は自己保身に悪用しようとしたのである。記事には、内情を知った雅子さんの怒りが散りばめられている。ゴシップ記事のように読み飛ばしていい種類の記事ではない。


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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。最新刊に沖縄県民の潜在意識を探った『国権と島と涙』(朝日新聞出版)がある。