3月14日(日)~3月28日(日) 両国国技館(画像は「NHKスポーツオンライン 大相撲『おすすめ動画』」より)
2横綱が途中休場に引退、小結高安が初優勝を意識して最終盤で自滅。大関復帰のかかった照ノ富士が逆転勝ちで有終の美を飾った。実に4年ぶりの大関復帰で来場所は4大関、横綱不在の五月場所になる。
東小結の高安は2日目から9連勝してトップに立ち、8日目には照ノ富士を破り波に乗るかと思われた。しかし、13日目の若隆景(西前頭二枚目)戦で緊張のあまり上体が固くなり、足の運びが悪くなった。小兵をあしらうのは上手い力士だが、14日目は同じく軽量の翔猿(西前頭8枚目)にも勝てる相撲で前に足が出ず、相手に余裕を与えた挙句に首投げを食らって先に落ちた。そして千秋楽は碧山にも敗れて10勝5敗。2ケタの勝ち星を挙げて大関の足掛かりは作ったが、またも優勝のチャンスを逃した。
元大関のプライドが邪魔をしたのではないか。インタビューを聞くと、生真面目で礼儀正しい。だが、土俵の佇まいは慎重すぎるきらいがあり、立ち合いも勿体ぶって偉そうに立つ。もっとがむしゃらに勝負を付けにいく姿勢があれば、違った結果になったはずだ。
しこ名を変えてほしい「ワカタカガケ」
若隆景が今場所大いに活躍した。東洋大では御嶽海(西小結)の後輩にあたる。先輩は「まだまだでしょう」と4日目に勝って偉そうに話していたが、ぼやぼやしているとその後輩に抜かれる。今場所も辛うじて勝ち越し。「万年大関候補」と呼ぶのにも飽きてきた。中盤は必ず小休止。今場所も5日目から12日目で2勝6敗。根性のなさは群を抜く。
しかし、「ワカタカカゲ」は実に読みづらい。アナウンサーも、ワカ、といったん区切って発音していた。解説の親方連中は噛むのを嫌がり、しこ名を呼んでいなかったほどである。来場所は関脇・小結に空きがないので三役は厳しいが、十両に落ちている炎鵬の代わりで小兵相撲の代表格。人気も出てきた。
<3日目 貴景勝―若隆景戦>
照ノ富士時代は来るか
今場所は2横綱の復帰で盛り上がるかと思われたが、白鵬が2番取っただけで休場。鶴竜は場所中の11日目に引退を発表。今後は照ノ富士に次期横綱への期待が高まることになった。貴景勝は押し相撲で安定性に欠け、正代は根性なし。朝乃山は2年前に初優勝したときから次期横綱候補に浮上したが、稽古不足で伸び悩んでいる。そうなると照ノ富士が一番手の候補になるが、両膝に爆弾を抱えているので、いつまでとれるか未知数。
それでも現在の実力からすれば筆頭候補。怪我をして取れなくなったら引退の潔さも持ち合わせているはず。一度は地獄を見た男だから腹を括っている。古傷の痛みが再発して仮に大関陥落の危機になれば、自ら進退を決めると思う。本当は恵まれた体で四つ相撲もできる正代が真面目に稽古を積めば綱も現実味を帯びるが、勝負に恬淡としていて覇気がない。それは朝乃山にも言えるのだが、今どきの若者と言うべきか。
またも転落、無様な伊之助
千秋楽結びの一番。正代と朝乃山の大関対決でそれは起きた。立行司の第41代・式守伊之助は、2年前の初場所に続いて土俵下に転げ落ちた。見にくいが、下の写真で2人の力士の奥で草履の裏側を上に向けてもんぞり返っているのが御仁である。大関2人に折り重なるようにして転倒し、館内が大きくざわついた。
この人は2年前にも土俵下に落ちたあと、「トレーニングをしているから大丈夫」などと軽口を叩いたが、本当のところはどうなのか怪しい。大きく股を開きながら落下していく様子は無様の一言。力士の動きを間近で観察して勝敗を見極めたい姿勢は認めるが、その位置取りはいつも危なっかしい。力士の動きを事前に察知する想像力が乏しいのだ。だから、いつも力士との距離感を誤って土俵際に詰まり、逃げ場を失って奈落の底に真っ逆さまなのである。
<千秋楽 正代―朝乃山戦>
最近は、伊之助の立ち回りがどうにも鼻に付き、肝心の勝負に集中できないことがある。いつも最後の2番を担当しているので、好勝負に水を差すことが実に多い。どんなトレーニングをしているのか聞いてみたくなるほど、土俵の中での身のこなしが悪い。まぁ、そんなことが気になるくらい、今場所は盛り上がりに欠けていたということだろう。(三)