今週の週刊文春トップは『岸田政権を壊す男 甘利明幹事長のウソ』。5年前、経済再生相だった甘利氏のURへの口利き・建設会社からの金銭授受疑惑をスクープした文春が、疑惑を「決着済み」と片付けようとする甘利氏の新幹事長就任に改めて異を唱える内容だ。コメントを求められた元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士は「(あの事件は)あっせん利得処罰法違反で充分立件し得るケースでした」と明言し、記事の文中では、当時法務省官房長のポストにいた黒川弘務氏(昨年、賭けマージャン問題で辞任した東京高検検事長)が親しい記者に対し「甘利さんの件も報告を受けていたね。森友も(文書を)“お化粧”することくらいあるでしょ」とほのめかしたことも暴かれている。


 伊藤詩織さんへのレイプ疑惑を「もみ消した」とされる元警視庁刑事部長・中村格氏が先だって、警察庁長官に大出世した件もしかり。この国の検察・警察の公平性・独立性に関しては、このところ、あまりに黒々としたネガティブな印象が広がっている。文春は甘利氏の記事に関連して、他の新政権幹部に関しても『新内閣は「疑惑の玉手箱」じゃけえ』という広島弁のタイトルで、牧島かれんデジタル相、堀内詔子ワクチン相、金子原二郎農水相、二之湯智国家公安委員長の周辺でも囁かれる諸疑惑をまとめている。


 週刊新潮のトップは『誰が「眞子さま」を壊したか 「PTSD」で言論封殺の全内幕』。小室圭さんとの結婚問題でメディアやネットの誹謗中傷を受け、眞子さまが「複雑性PTSD」の状態と診断された、という秋篠宮家側の発表に反発し、世間から眞子さまに寄せられた声は正当な批判や助言であり、誹謗中傷ではない、と主張する内容だ。


 個人的に興味深いのは、眞子さま問題そのものより、発表の直後、Yahoo!ニュースが『ユーザーのみなさまへのお願い コメントの投稿にあたって』と題する告知を出し、「過度な批判、攻撃的な投稿はお控えください』と広く要請したことだ。正直、眞子さまの件以上に凄まじいヘイト投稿やデマに基づく誹謗中傷が「ヤフコメ欄」には日常から溢れ返っている。Yahoo!側はAIによるチェックなどで悪質投稿の排除に努めているというが、実情はまったくのザル状態である。このため一部からは、ヤフコメ欄の廃止が訴えられてきたが、閲覧数や広告収入への影響を懸念してか、問題の改善はほとんど見られずにいた。


 ところが、ことが皇室の問題になると、間髪を入れずこのような反応を見せたのだ。私は眞子さまのご結婚問題に関しては、ぼんやりとした個人的印象を持つ以上の格別の意見はなく(そもそも、肉親や親友でもない他者の結婚に「忠告」等をしたくなる心理がよくわからない)、ネット等の書き込みにも善し悪しのバラツキがあると感じるが、他のテーマのヤフコメには、はるかに酷い書き込みが日々出ていて、今回の件を問題視するならば、そちらのほうにこそ厳格な対応が必要だと考える。Yahoo!社やツイッター社の「見て見ぬふり」「事実上放置」というスタンスがこれを機に変わるのなら、眞子さまには申し訳ないが、今回の騒ぎも意味を持つように思う。


 文春、新潮ほか今週の各誌には、大長寿劇画『ゴルゴ13』の作者・さいとうたかを氏の訃報が載っていた。私はと言えば、自分から単行本を購入した記憶はないのだが、散髪屋や定食屋の本棚から無造作に手に取ると、結構な確率で「これは以前読んだ」という号に当たるから、それなりの愛読者だったのだと思う。ちなみにゴルゴファンとして最も有名な麻生太郎氏は、今回の訃報にあたっても、あちこちでそのコメントが引用されていたが、麻生氏とゴルゴ、というつながりで思い出してしまうのは、彼の首相就任後のことだったか、麻生氏が褒めちぎるゴルゴシリーズを試しに読んでみた中曽根元首相がただ一言、「バカだねぇ」と麻生氏を評したという大昔の文春記事である。娯楽作品として褒める程度ならいざ知らず、「自分はこれで国際情勢を学んだ」とまで一国の宰相が公言してしまうと、さすがに苦笑したくなる気持ちは理解できる。


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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。最新刊に沖縄県民の潜在意識を探った『国権と島と涙』(朝日新聞出版)がある。