彩都産学官連携フォーラム2022が26日、オンライン形式で開催された。大阪府や関西医薬品協会が実行委員会として主催した。今回のテーマは「彩都から世界の新興感染症の制圧に向けての挑戦」。


「緊急時迅速に医薬品を供給するために」をテーマに講演した厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理課の荒川裕司氏は、昨年6月から政府の新型コロナ対策戦略のひとつとなっている緊急時の薬事承認制度について解説した。


 11月から12月まで3回行われた厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会のとりまとめについて、国内治験を省略する制度の創設の是非であるとしたが、そこで導入された「推定」について、典型的な事例などをあげて説明。ワクチンでは顕著な有効性と高いベネフィット、治療薬については第Ⅱ相までの一定の有効性とベネフィットであるとして、安全性は第Ⅲ相での判断となることなどに改めて理解を求めた。


 荒川氏は講演のなかで、「ロナプリーブ」の承認が欧米より遅れたことについて、メーカー間の販売契約の影響があったことを指摘し、ワクチン、治療薬ではそれほど大きな承認の時間差はないことも示唆。また、コロナ関連医薬品の薬価上の措置については、大半の治療薬は政府買い上げで対応していて、保険上の取り扱いはないが、既収載品などのものは保険上の取り扱いとなることなどを説明した。


「新興感染症に備えて」をテーマに講演したAMEDの岡田就将氏は、新型コロナウイルス関連の医薬品メーカー等への支援状況を語り、昨年7月にAMEDに準備室を設けた先進的研究開発センター(SCARDA)の運用、検討状況などを概説した。


 開発支援では治療薬開発では14件の臨床試験中のものがあり、ワクチンも複数の研究が走っているとしたが、ワクチンでは実用化された国産品がない状況も報告。一方で、基礎的シーズでは新規創薬などのための研究開発が着実に進展しているとした。


「近未来ワクチン研究開発の今後の展開」を語った基盤研の山本拓也氏は、ワクチン開発に際しての国の役割について、各メーカーが開発するワクチンに対する評価基準を早期に確立する必要があるとした。そうした予算の優先順位をつけることで、開発速度をあげることができるのではないかとの期待も示した。


 また、現在のmRNAワクチンについては、短期的には有効との評価を示しつつ、免疫記憶を延長する研究課題も指摘した。