今年4月に大阪府立大学と大阪市立大学が合併し発足した大阪公立大学(西澤良記理事長)と大阪商工会議所(鳥居信吾会頭)は9日、大阪で産学連携を具体化していく包括連携協定を結び、大阪市内で締結式を行った。
締結式に際しては、大阪公立大学から産学連携を視野にした研究分野や研究拠点づくりなどに関するプレゼンテーション中心としたシンポジウムが行われた。
●手代木氏がスピーチ
同シンポで大商側からは副会頭を務める手代木功・塩野義製薬社長が「Well-beingの実現に向かう大阪の挑戦」をテーマにしたキーノートスピーチに立ち、Well-beingの理念に基づいたウェルネス関連分野の世界市場規模570兆円などを紹介しながら、個別化医療、シームレスな健康対応、感染症対策などで、多様性を重視した社会に向けた技術の実装のあり方などについて語った。手代木氏は多様性やサステナブルを意識した社会実装とその壁を語る中で、多様なものの国産化志向へ舵を切る観点を提示、塩野義製薬も国産化への舵を切ったことをあらためて強調した。
一方、同氏は大公大との連携を念頭に、アカデミアへの期待として、最先端を切り開く基礎研究の充実、社会ニーズに即した応用研究、社会実装・普及に必要なリビングラボ機能の装備、行政と連携したリアルワードデータの活用などを示した。そのうえで、大阪でのWell-being実現と、それによって獲得したソリューションで、大阪から世界に成果を発信したいとの意欲も表明した。
●創薬研究のなかもずハブは25年オープン
大阪公立大学は、医学部を持つ市立大と理学、獣医学での実績を持つ府立大が府市一体政策の下で合併した。イノベーションアカデミーを標榜し、大阪府内5ヵ所にキャンパスを持ち、今後はリビングラボとしてそれぞれ機能させる。中核となる大阪城近く「「森之宮キャンパス」は25年度までに建設される予定。
旧府立大は製薬企業開発部門への人材供給で実績がある。やはり25年にオープン予定の「なかもずハブ施設」で、創薬やゲノム編集などの研究基盤を集約する。
9日のシンポでは、産学連携研究機関として、医学研究科感染症科学研究センターや獣医学研究科を中核とする大阪国際感染症研究センター(りんくうタウン)のプレゼンもあり、新型コロナワクチン接種後の免疫応答や新規技術を用いた治療薬・ワクチン開発などに関して、人文・社会学系の学際分野や製薬企業などとの連携も含めた研究基盤を形成する方針が示された。
また、認知症研究を専門とする附属病院や関連介護施設も装備した、健康長寿医科学研究センター(仮称)の建設も明らかにされた。26年2月のオープンを目指す。
大商側からはこの日、具体的な連携内容は示されず、大商が進める大阪南部の都市計画づくりなどでの連携が示唆されるのにとどまった。