大阪インドネシア共和国総領事館が主催する「日本・インドネシア医薬品医療機器ビジネスフォーラム」が6日、大阪市内で開かれた。主催、共催者にはインドネシア大使館、同国政府関係省庁も加わった。また、関西医薬品協会やジェトロ大阪本部が後援。フォーラム冒頭では、インドネシア製薬団体と日薬連の間で薬事分野での協力関係構築を約した文書に調印した。
パネルディスカッションに参加した武田薬品は、インドネシア国家医薬品食品管理庁(BPOM)から8月23日に承認取得を発表したデング熱ワクチン「QDENGA」について、来年早々には発売する予定を明らかにした。
QDENGAに関して武田薬品の関篤史氏は、BPOMが世界に先駆けて承認したことを強調し、2030年までにデング熱での死亡ゼロを目指す同国CDCの目標に貢献できるとした。また、時間はかかるものの、QDENGAの現地生産の検討を始めたことも明らかにした。
関氏は、インドネシアにおける武田薬品の現地子会社は世界で3番目に古いとして、同国との関係の深さを強調、現地生産拠点への追加投資も検討中だと語った。
日本側から講演した日薬連の宮島俊彦理事長は、同フォーラムが日本のヘルスケア企業にとってはインドネシア投資案件への大きな起爆剤になると評価。同国が制定した雇用促進や手続きの簡素化を進めるオムニバス法について、すでに進出している日本本企業にとって、大きなメリットとなるとして、高く評価した。
また、両国で協働できる案件としてハラル認証を挙げ、ハラル認証は日本のヘルスケア企業には苦手な案件だが、イスラム圏に進出する企業には大きな強みにもなるとして、日本企業がアジア・アフリカに進出するにために、インドネシアがハラル審査の世界的な中心地となることを求めた。さらに、ハラル国際相互認証について、インドネシア当局が国際的評価を得るために日本と連携することは日本企業にも大きなメリットだとした。
このほか宮島氏は、ASEANの共同審査システム構築にも言及し、日本の医薬品審査ノウハウをサポートできるPMDAのアジアトレーニングセンターの活用を求めた。また、BPOMが一昨年、新薬の迅速審査規定を策定したことに触れ、すでに日系企業品目がそのスキームで審査が進められているとして、日本企業には大きなメリットになるとした。
一方、重要案件として、インドネシアが進める現地調達率の厳しさを指摘、現地で完成品を製造する企業は国内での原材料調達率が一定の水準を越えていなければ、政府調達カタログ(Eカタログ)にリスティングできなくなるため、この厳しい政策が加速すれば、日本をはじめ外資の撤退につながらないか、率直な懸念があるとも述べた。
今回のフォーラムは、インドネシアが保健医療分野での中期的な国家計画に取り組んでいるなか、コロナ後の世界の健康回復力を支援するために、日本との協働を行うことを開催目的としている。
ただ、インドネシア側からは、2.7億人の人口を主に、市場のポテンシャルへの理解を求めることが強調される展開が目立ち、研究開発に対する優遇税制や、規制当局の審査機関の短縮努力などが示された。しかし、現地調達率の厳しさへの批判を意識してか、国外企業の国内生産化のメリットも強調され、さまざまなインセンティブへの理解も求められた。